背理法を用いた命題の証明
ここでは、「有理数m、nについて、"m+n√5=0"ならば"m=n=0"であることを証明する問題」を通して、背理法への理解を深めていきましょう。背理法について未学習の人は、「
命題[背理法を用いた証明と練習問題]」で学習してからこちらのテキストに戻ってきてください。
「"m+n√5=0"ならば"m=n=0"であることを、背理法を用いて証明」は、よく出題される形式の問題です。解き方のパターンが決まっているので、しっかりと解法をマスターしましょう。
問題
「有理数m、nについて、"m+n√5=0"ならば"m=n=0"であることを、背理法を用いて証明しなさい。」
解法
まず命題を整理しましょう。説明をしやすくするために「"m+n√5=0"」を条件p、「"m=n=0"」を条件qとします。つまり与えられた命題は、「p⇒q」となります。
これを背理法を用いて証明するわけですから、「

」と仮定して、ここに矛盾がないかどうかをチェックしていきましょう。
この問題でポイントとなるのは「

」
を正確に把握できるかです。「m=n=0」を言葉で表すと「m=0かつn=0」ですね。これの否定ですから

は、「m≠0またはn≠0」となります。(「
"かつ"と"または"の否定」より)
■(1) mもnもどちらも0でない場合
m+n√5=0を変形します。
n√5=−m
√5=−(m/n)
ここで、mとnは
有理数であることを思い出しましょう。mとnが有理数ということは当然、"−(m/n)"も有理数ということになります。つまり"√5=−(m/n)"は、
「無理数=有理数」
と矛盾を抱えた式なわけですね。
■(2) mかnのどちらかが0の場合
先ほどと同じようにm+n√5=0を変形して"√5=−(m/n)"とします。
mかnのどちらかが0なとき、"−(m/n)"は必ず0になりますね。つまり"√5=−(m/n)"は
"√5=0"
と矛盾を抱えた式となります。
以上のことから、「

」が成り立たないことがわかりました。よって「p⇒q」すなわち「有理数m、nについて"m+n√5=0"ならば"m=n=0"である」ことが証明できました。