現代語訳(口語訳)
虎
(※1)百獣を求めて之を食らひ、狐を得たり。
虎は獣を探して食べて(生きて)いましたが、(ある日)狐を捕まえました。
狐曰く、
(捕まえた)狐が言うことには、
「(※2)子敢へて我を食らふこと無かれ。
あなたは決して私を食べてはいけません。
天帝我をして百獣に長たらしむ。
天の神は私を百獣の王にされているからです。
今子我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。
今あなたが私を食べたのならば、それは天の神の命令に逆らうことになります。
子我を(※3)以つて信ならずと為(な)さば、吾子の為に先行せん。
あなたが私の言うことを信用ならないと思うのならば、私はあなたの為に先に歩いてみましょう。
子我が後に随(したが)ひて観よ。
あなたは私の後ろについて来て見ていなさい。
百獣の我を見て、敢へて走らざらんや。
百獣の王である私の姿を見て、(見た他の獣たちが)どうして逃げないことがありましょうか。いやきっと逃げるはずです。」と。
虎以つて然りと為す。
虎はその通りだと思いました。
故に遂に之と行く。
そこでそのままこれ(狐)と歩いて行くことにしました。
獣之を見て皆走る。
獣たちはこの様子(狐の後ろに虎がついて歩いている様子)を見て、皆逃げていきました。
虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。
虎は獣たちが自分のことを恐れて逃げていったということに気づかなかったのです。
以つて狐を畏ると為すなり。
(獣たちが)狐のことを恐れていると思ったのです。
文法解説
■置き字
■(ⅰ)而
而」は「ジ」と読めるが、本文で読むことはなく、接続を表す置き字。 接続を表すとは、「~なので○○」や「~ではあるけれどけど△△」などを指す。順接を表すのか逆説を表すのかは文脈から判断しなければならないが、往々にして次のことが言える。
・「而」の直前に読む語の送り仮名が「〜て、〜して」の場合は順接
・「而」の直前に読む語の送り仮名が「〜ども」の場合は逆接
■禁止
■(ⅱ)無敢食我也
「無敢A」で「あえてAなかれ」と読み、「決して~をするな」という強い禁止の意を表す。ちなみにこの文章における「也」は置き字。
■使役
■(ⅲ)使我長百獣
「使AB」で、「AをしてBしむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。
■反語
■(ⅳ)敢不走乎
「敢不A乎」で「あえてAざらんや」と読み、「どうしてAしないことがあろうか-いやきっとAする」と訳す。
単語
| (※1)百獣 | 獣たち |
| (※2)子 | あなた |
| (※3)以A為B | AをBと思う |
練習問題にチャレンジ!
『借虎威(虎の威を借る狐)』テストで出題されそうな問題
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先従隗始/先づ隗より始めよ』
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著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。