『秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる』意味と解説
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
このテキストでは、
古今和歌集に収録されている歌「
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説、そして品詞分解を記しています。
古今和歌集とは
古今和歌集(こきんわかしゅう)は、平安時代前期の勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)です。勅撰和歌集とは、天皇や上皇の命令により編集された和歌集のことです。
原文
秋立つ日
詠める
(※1)秋来ぬと目には
(※2)さやかに見えねども 風の音にぞ
(※3)おどろかれぬる
ひらがなでの読み方
あききぬとめにはさやかにみえねども かぜのおとにぞおどろかれぬる
現代語訳
立秋の日に詠んだ(歌)
(立秋の日になっても)秋が来たと、はっきりと目にはみえないけれど、風の音で(秋の到来に)はっと気づきました。
解説
特に凝っているところはなく、ストレートに自分の気持ちを表した、シンプルな歌です。まだ暑さが残る夏の終わりに、秋らしい風を感じることは現代でもよくあることですが、そこを感じながら読んでみましょう。
この歌には句切れはありません。
単語
(※1)秋来ぬ | 「ぬ」は完了の助動詞です。完了の助動詞は活用後の連用形につきます。よって「来」は「き」と読みます。もし「こ」と読むと、「ぬ」は打ち消しの助動詞となるために、「秋がこない」という訳になります。 |
(※2)さやかなり | 形容動詞「さやかなり」の連用形で「はっきりとしている」を意味しています。 |
(※3)おどろく | 現代のように「ギョッとする」ではなく、「はっと気づく」などの意味で訳しています。 |
品詞分解
※名詞は省略しています。
秋 | ー |
立つ | タ行四段活用「たつ」の連体形 |
日 | ー |
詠め | マ行四段活用「詠む」の已然形または命令形 |
る | 完了の助動詞「り」の連体形 |
ー | ー |
秋 | ー |
来 | カ行四段活用「く」の連用形 |
ぬ | 完了の助動詞「ぬ」の終止形 |
と | 格助詞 |
目 | ー |
に | 格助詞 |
は | 格助詞 |
さやかに | 形容動詞・ナリ活用「さやかなり」の連用形 |
見え | ヤ行下二段活用「見ゆ」の未然形 |
ね | 打消の助動詞「ず」の已然形 |
ども | 接続助詞 |
風 | ー |
の | 格助詞 |
音 | ー |
に | 格助詞 |
ぞ | 係助詞 |
おどろか | カ行四段活用「おどろく」の未然形 |
れ | 自発の助動詞「る」の連用形 |
ぬる | 完了の助動詞「ぬ」の連体形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。