四大文明
古代文明とは、後の国家や帝国の基礎となった最初の定住した安定した共同体を指します。古代文明の研究は、紀元前3100年頃に文字が発明されたことから始まる古代史の最初の部分に関心があります。人類は文字ができる前から存在していましたが、文字は歴史的記録を残すことを可能にしました。
文明の発祥地として一般に認められているのは、四大文明と南北アメリカの二つの文明を合わせた六つの地域です。古代世界では、
メソポタミア、エジプト、インダス、中国が最も早く文明を築いたと考えられています。新世界では、ペルー沿岸のカラル・スペ文明とメキシコのオルメカ文明が文明の発祥地とされます。これらの文明はすべて、農業に依存して生活の基盤を築きました(カラル・スペ文明は最初は海洋資源に依存していた可能性もあります)。これらの文明はすべて、農民が余剰の食料を生産し、文明の都市部の中央政府、政治指導者、神官、公共事業を支えました。
ここでは、古代世界の四大文明(メソポタミア、エジプト、インダス、中国)の成立について、それぞれの地理的・歴史的背景、特徴、影響などを概説しています。
メソポタミア文明
メソポタミアとは、現在のイラクにあたる地域で、
チグリス川とユーフラテス川に挟まれた土地のことです。メソポタミアは「
二つの川の間の土地」という意味のギリシャ語に由来します。メソポタミアは、紀元前4000年頃から紀元前6世紀まで、さまざまな王朝や都市国家が興亡した地域であり、人類最古の文明のひとつとされます。
メソポタミア文明の成立には、農業の発展が重要な役割を果たしました。メソポタミアの土地は、川の氾濫によって肥沃になっており、灌漑を行うことで豊富な作物を得ることができました。農業の発展によって、人口が増え、定住が進み、社会的・経済的な分業が生まれました。また、農業の発展に伴って、貿易や交流も活発になり、メソポタミアは周辺の地域との関係を深めました。
メソポタミア文明の特徴のひとつは、都市国家の存在です。都市国家とは、都市とその周辺の農村からなる独立した政治的単位です。メソポタミアでは、紀元前3000年頃から、ウル、ウルク、キシュ、ラガシュ、エリドゥなどの都市国家が形成されました。これらの都市国家は、しばしば争いや同盟を繰り返しながら、政治的・軍事的な力を競い合いました。また、都市国家の中心には、神殿や宮殿などの壮大な建造物が建てられ、神々への崇拝や王権の象徴となりました。
メソポタミア文明のもうひとつの特徴は、文字の発明です。メソポタミアでは、紀元前3300年頃に、粘土板にくさび形の印を刻む楔形文字が発明されました。楔形文字は、当初は貿易や税の記録などの目的で使われましたが、やがて法律や歴史、文学などの分野にも広がりました。楔形文字は、メソポタミア文明の歴史や文化を伝える貴重な資料となっています。
メソポタミア文明は、後の文明に多大な影響を与えました。メソポタミアの文化や技術は、バビロニア、アッシリア、ペルシアなどの王朝に受け継がれ、さらにはギリシャやローマなどの文明にも伝播しました。例えば、メソポタミアで発達した天文学や数学は、後の文明の科学や哲学に影響を与えました。また、メソポタミアの神話や文学は、後の文明の芸術や宗教に影響を与えました。
エジプト文明
エジプト文明は、アフリカ大陸の北東部に位置し、ナイル川とその支流に沿った土地で栄えました。紀元前3000年頃から紀元前30年頃まで、古代エジプト文明が繁栄したこの地域は、人類最古の文明の一つとされています。
ナイル川の存在は、エジプト文明の成立において極めて重要な役割を果たしました。毎年定期的に氾濫するナイル川は周辺の土地に肥沃な土壌をもたらし、これがエジプトの農業の基盤となりました。この恵まれた土壌によって豊富な作物を収穫し、農業の発展が促進され、人口が増加し、定住が進展しました。それに伴い、社会的・経済的な階層が形成されました。また、ナイル川はエジプトの交通や貿易の中心地となり、周辺地域との繋がりを深めました。
エジプト文明の特筆すべき特徴のひとつは、王権の神聖化です。紀元前3000年頃に上エジプトと下エジプトの二つの王国が統一され、最初の王朝が興りました。ファラオと呼ばれた王は神の子とされ、政治や宗教の最高権威として国家の統一と安定を保ちました。彼らはピラミッドやオベリスクなどの巨大な建造物を築き、自らの栄光や不滅性を示しました。
もう一つの特筆すべき点は、象形文字であるヒエログリフの発明です。紀元前3200年頃、ヒエログリフと呼ばれる絵文字が誕生しました。当初は神殿や墓に刻まれましたが、後にパピルスにも記されました。法律や歴史、文学の分野で使用され、エジプト文明の歴史や文化を伝える重要な資料となりました。
エジプト文明は後の文明に大きな影響を与えました。その文化や技術は、ナイル川流域のクシュやヌビアなどの王国に引き継がれ、さらにはギリシャやローマなどの文明にも広まりました。医学や建築などで発展したものが後の文明の科学や芸術に影響を与え、神話や文学は後の宗教や文化にも影響を及ぼしました。