はじめに
このテキストでは、
竹取物語の『
火鼠の皮衣』に収録されている歌「
名残りなく燃ゆと知りせば皮衣思ひのほかにおきて見ましを」の現代語訳・口語訳と解説、そして品詞分解を記すています。
原文
名残りなく燃ゆと知りせば皮衣思ひのほかにおきて見ましを
ひらがなでの読み方
なごりなく もゆとしりせば かはごろも おもひのほかに おきてみましを
現代語訳(口語訳)
跡形もなく燃えると知っていたならば、皮衣を気にかけることもなく焼かずに火の外において見ていましたでしょうに
解説
竹取物語には次のように記述があります。
かぐや姫から火鼠の皮衣を持ってくるよう言われた右大臣は、やっとのことで火鼠の皮衣を入手したのですが、これが本物かどうかはわかりません。本物の火鼠の皮衣であるならば、火にくべても燃えないはずなので、焼いて試してみましょうというかぐや姫の提案で皮衣を火にくべてみたのですが、その皮衣はあっさり燃えてしまいました。その様子を見たときにかぐや姫が詠んだ歌です。
この歌は、前段で右大臣が詠んだ「限りなき思ひに焼けぬ皮衣袂かはきて今日こそは着め」に対する返歌です。
技法
■反実仮想
「せば〜まし」で反実仮想を表す。
品詞分解
※名詞は省略しています。
名残りなく | 形容詞・ク活用「なごりなし」の連用形 |
燃ゆ | ヤ行下二段活用「もゆ」終止形 |
と | 格助詞 |
知り | ラ行四段活用「しる」の連用形 |
せば | 連語、または過去の助動詞「き」の未然形+接続助詞「ば」、またはサ行変格活用の動詞「す」の未然形「せ」+接続助詞「ば」 |
皮衣 | ー |
思ひ | ー |
の | 格助詞 |
ほか | ー |
に | 格助詞 |
置き | カ行四段活用「おく」の連用形 |
て | 接続助詞 |
見 | マ行上一段活用「みる」の未然形 |
まし | 反実仮想の助動詞「まし」の終止形 |
を | 間投助詞 |