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古文単語「とる/取る/執る/採る/捕る」の意味・解説【ラ行四段活用】

著者名: 走るメロス
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とる/取る/執る/採る/捕る

このテキストでは、ラ行四段活用の動詞「とる/取る/執る/採る/捕る」の意味、活用、解説とその使用例を記している。

ラ行四段活用

未然形とら
連用形とり
終止形とる
連体形とる
已然形とれ
命令形とれ


意味1:他動詞

持つ、つかむ、握る

[出典]かぐや姫の昇天 竹取物語
「...とて、壺の薬添へて、頭中将呼び寄せて奉らす。中将に、天人取りて伝ふ。」

[訳]:...と詠んで、壺の薬を付け加えて、頭の中将を呼び寄せて(帝に)献上させます。中将に、天人は(壺を)持って(そのことを)知らせます。


意味2:他動詞

捕まえる、捉える

[出典]:女院死去 平家物語
「壇の浦にて生きながらとられし人々は、大路を渡して頭をはねられ...」

[訳]:壇ノ浦で生きたまま捉えられた人々は、(都の)大通りを歩かせて(その後に)首をはねられ...




意味3:他動詞

(手で)
操作する、扱う、使う

[出典]:万葉集
「香島より熊来を指して漕ぐ舟の梶とる間なく都し思ほゆ」

[訳]:香島から熊来を目指して漕ぐ舟が櫓を絶え間なく操作するように、絶え間なく都のことが思われます


意味4:他動詞

採取する、収穫する

[出典]竹取物語
「今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。」

[訳]:今となっては昔のことですが、竹取の翁という者がいました。野や山に分け入って竹を採取しては、いろいろなことに用立てたのでした。




意味5:他動詞

支配する、自分のものにする、奪う

[出典]猫また 徒然草
「山ならねども、これらにも、猫の経上りて、猫またに成りて、人とる事はあなるものを。」

[訳]:山ではなくても、この辺りにも、猫が年を取って変化して、猫またになって人(の命)を奪うことがあるらしい。


意味6:他動詞

選ぶ、採用する、選び出す

[出典]大江山の歌 十訓抄
「和泉式部、保昌が妻にて、丹後に下りけるほどに、京に歌合ありけるを、小式部内侍、歌詠みにとられて、歌を詠みけるに...」

[訳]:和泉式部が、藤原保昌の妻として、丹後の国に赴いた頃のことですが、京都で歌合わせがあったときに、(そこに和泉式部の娘の)小式部内侍が、歌の詠み手に選ばれて歌を詠んだのを...




意味7:他動詞

拍子をとる、調べに合わせる

[出典]いでや、この世に生まれては 徒然草
「手など拙からず走り書き、声をかしくて拍子とり、いたましうするものから、下戸ならぬこそ、男はよけれ。 」

[訳]:文字などは下手ではなくすらすらと書き、(酒宴の座では)声がよくて(楽器の)調子をあわせ、(酒をすすめられて)困った様子はみせるものの、下戸ではない人こそ、男としてはよいものです。


意味8:他動詞

(様子を)うかがう、推量する

[出典]:花散里 源氏物語
「さきざきも聞きし声なれば、声作り、気色をとりて、御消息聞こゆ。」

[訳]:以前にも聞いた(ことのある)声なので、咳払いをして、様子をうかがってから、ご伝言を申し上げる。




意味9:他動詞

〜に関係する、〜に関して、〜について、〜によって

※この用法の場合「〜にとりて」の形で用いられる。
[出典]五月五日、賀茂の競べ馬を 徒然草
「人、木石にあらねば、時にとりて、物に感ずることなきにあらず。」

[訳]:人は、木や石(のように無感情なもの)ではないので、時によって、心打たれることがないわけではない。

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ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 Benesse
全訳読解古語辞典 第四版 三省堂

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