さしいる/差し入る/射し入る
このテキストでは、古文単語「
さしいる/差し入る/射し入る」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
※「さし」は接頭語。
「さしいる」には、
①ラ行四段活用
②ラ行下二段活用
の用法がある。
①ラ行四段活用
未然形 | さしいら |
連用形 | さしいり |
終止形 | さしいる |
連体形 | さしいる |
已然形 | さしいれ |
命令形 | さしいれ |
■意味1:自動詞
(光が)
さしこむ。
※この用法の場合「射し入る」とも表記する。
[出典]:
家居のつきづきしく 徒然草
「よき人の、のどやかに住みなしたる所は、
さし入りたる月の色も、ひときはしみじみと見ゆるぞかし。」
[訳]:身分が高く教養がある人が、ゆったりとくつろいで住んでいる所は、(そこに)
差し込んでいる月の光も、いっそう身にしみるように感じられるものです。
■意味2:自動詞
中に入る。
[出典]:
これも仁和寺の法師 徒然草
「医師のもとに
さし入りて、向かひゐたりけむありさま、さこそ異様なりけめ。」
[訳]:医者の所(家の中)に
入って、(医者に)向かって座っていたであろう有様は、さぞかし風変わりであっただろう。
②ラ行下二段活用
未然形 | さしいれ |
連用形 | さしいれ |
終止形 | さしいる |
連体形 | さしいるる |
已然形 | さしいるれ |
命令形 | さしいれよ |
■意味1:他動詞
中に入れる、差し入れる。
[出典]:
これも仁和寺の法師 徒然草
「酔ひて興に入るあまり、傍らなる足鼎を取りて、頭にかづきたれば、つまるやうにするを、鼻を押し平めて、顔を
差し入れて舞ひ出でたるに、満座興に入ること限りなし。」
[訳]:酔って面白がるあまり、側にある足鼎をとって、頭にかぶったところ、つかえるように感じたのに、鼻を押して平らにして、顔を(足鼎の中に)
差し入れて舞い出たところ、その場にいる者全員が面白がることこの上ない。