「にほふ/匂ふ」の意味・活用・使用例【ハ行四段活用/ハ行下二段活用】
このテキストでは、古文単語「
にほふ/匂ふ」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
「にほふ」には、
①ハ行四段活用
②ハ行下二段活用
の用法がある。
①ハ行四段活用
未然形 | にほは |
連用形 | にほひ |
終止形 | にほふ |
連体形 | にほふ |
已然形 | にほへ |
命令形 | にほへ |
■意味1:自動詞
美しく色づく、何かの色に染まる。
[出典]:万葉集
「山背の久邇の都は、春されば、花咲きををり、秋されば、黄葉にほひ...」
[訳]:山背の久邇の都は、春になると花が咲き乱れ、秋になると紅葉が美しく色づき...
■意味2:自動詞
美しく照り輝く、色美しく映える。
[出典]:
万葉集 大伴家持
「春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ」
[訳]:春の庭が紅色に美しく照り輝いています。桃の花が木の下まで美しく照り映えた道に出てたたずむ少女よ。
■意味3:自動詞
恩恵を受けて栄える。
[出典]:真木柱 源氏物語
「ほとりまでもにほふためしこそあれ...」
[訳]:縁につながる人までも恩恵を受ける前例がありますが...
■意味4:自動詞
良い香がする。
[出典]:
新古今和歌集
「橘の匂ふあたりのうたた寝は夢も昔の袖の香ぞする」
[訳]:橘の花の良い香のするあたりでうたた寝をすると、夢の中でも慣れ親しんだ昔の人の袖の香がすることです
■意味5:自動詞
生き生きとした美しさに満ちている。
[出典]:若菜上 源氏物語
「二十にもまだわづかなる程なれど、いとよく整ひすぐして、かたちも盛りににほひて、いみじく清らなるを...」
[訳]:二十歳にもう少しという年齢ではあるが、大変立派に成長して、顔立ちも今を盛りに生き生きとした美しさに満ちていて、たいそう気品があるのを...
■意味6:他動詞
香を漂わせる、薫らせる。
[出典]:古今和歌集 小野篁
「花の色は雪に交じりて見えずとも香をだににほへ人の知るべく」
[訳]:花の色は雪(の色)に交じって見えなくても、せめて香だけでも薫らせておくれ。(花が咲いていると)人が知ることができるように
②ハ行下二段活用
未然形 | にほへ |
連用形 | にほへ |
終止形 | にほふ |
連体形 | にほふる |
已然形 | にほふれ |
命令形 | にほへよ |
■意味:他動詞
美しく色付ける、染める。
[出典]:万葉集
「住吉の岸野の榛ににほふれどにほはぬ我やにほひて居らむ」
[訳]:住吉の岸野の榛で染めても(なかなか)染まらない私の心ですが、どうして人の心に染められているのでしょうか