『春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ』わかりやすい現代語訳と解説
このテキストでは、
万葉集に収録されている歌「
春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つをとめ」の現代語訳・口語訳と解説、そしてその品詞分解をしています。
書籍によっては、「
春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ乙女」、「
春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子」などと記されているものもあります。
万葉集とは
万葉集は、奈良時代末期に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集です。平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった『
梅花の歌三十二首并せて序』をはじめ、天皇や貴族、役人や農民など様々な身分の人々が詠んだ4500以上の歌が収録されています。
原文
春の園紅
にほふ桃の花
下照る道に
出で立つをとめ
ひらがなでの読み方
はるのその くれないにおう もものはな したでるみちに いでたつおとめ
現代語訳
■「にほふ」を連体形と解釈した場合
春の庭が紅色に美しく照り輝く桃の花が木の下まで照り映えている道に出てたたずむ少女よ。
■「にほふ」を終止形と解釈した場合
春の庭が紅色に美しく照り輝いています。桃の花が木の下まで美しく照り映えた道に出てたたずむ少女よ。
解説
この歌は、奈良時代の歌人
大伴家持(おおとものやかもち)によって詠まれた歌です。
大伴家持は、万葉集の編纂にもかかわっていました。
春の庭で赤く色づいている桃の花をまず描写していますが、この花の明るさが後に登場する少女をより鮮明にイメージさせています。ちなみに「
にほふ」とは、
美しく色づいている、美しく照り輝くを意味します。
品詞分解
※名詞は省略しています。
春 | ー |
の | 格助詞 |
苑 | ー |
紅 | ー |
にほふ | ハ行四段活用「にほふ」の連体形または終止形 |
桃 | ー |
の | 格助詞 |
花 | ー |
下照る | ラ行四段活用「したでる」の連体形 |
道 | ー |
に | 格助詞 |
出で立つ | タ行四段活用「いでたつ」の連体形 |
をとめ | ー |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。