「まがふ/粉ふ」の意味・活用・使用例【ハ行四段活用/ハ行下二段活用】
このテキストでは、古文単語「
まがふ/粉ふ」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
※まがふ/粉ふには、
①ハ行四段活用
②ハ行下二段活用
の用法がある。
①ハ行四段活用
未然形 | まがは |
連用形 | まがひ |
終止形 | まがふ |
連体形 | まがふ |
已然形 | まがへ |
命令形 | まがへ |
■意味1:自動詞
入り乱れる、入り交じる。
[出典]:源氏物語 紫式部
「侍従を
くゆらかして、物ごとに染めたるに、えひ香の香の
まがへる、いと艶なり。」
[訳]:侍従をくすぶって、(部屋にある)物ごとに(香を)たきしめているのに加えて、えい香の香が
入りまじっているのが、たいそう優美である。
■意味2:自動詞
(「〜にまがふ」の形で)
区別がつかないほど似ている。
[出典]:
須磨の秋・心づくしの秋風 源氏物語
「恋ひわびて泣く音に
まがふ浦波は思ふ方より風や吹くらむ」
[訳]:恋しさ思い悩んで泣く音に浦波の音が
よく似ているのは、(私のことを恋しく)思っている方角から(彼らの声をのせた)風が吹いてくるからでしょうか。
■意味3:自動詞
見分けがつかなくなる。
[出典]:
古今和歌集
「さくら花散りかひくもれ老いらくの来むといふなる道
まがふがに」
[訳]:桜花よ、散り乱れて空を曇らせておくれ。老いというものがやってくるだろうと聞いている。その老いのやって来る道が花びらで紛れて
見分けがつかなくなってしまうように
②ハ行下二段活用
未然形 | まがへ |
連用形 | まがへ |
終止形 | まがふ |
連体形 | まがふる |
已然形 | まがふれ |
命令形 | まがへよ |
■意味1:他動詞
区別がつかなくする、見失う。
[出典]:万葉集
「我が丘に盛りに咲ける梅の花残れる雪をまがへつるかも」
[訳]:私の丘に盛んに咲いている梅の花は、消え残っている雪との区別をつかなくしたことよ
■意味2:他動詞
見間違える、聞き違える。
[出典]:
二月つごもりごろに 枕草子
「空寒み花に
まがへてちる雪に」
[訳]:空が寒いので、花と
見間違えるかのように散る雪