現代語訳(口語訳)
蘇秦という者は、鬼谷先生を師匠としていました。
初めて遊説に出かけたときには、(自分の説く政策を採用してくれる国がなく)困窮して故郷に戻ってきました。
蘇秦の妻は、機織り機から下り(てねぎらうこともせ)ず、兄嫁は蘇秦のために食事を用意することはありませんでした。
(しかし蘇秦は)六国同盟の長となり、六国の宰相を務めることにもなりました。
蘇秦が旅の道中に洛陽を通りかかりました。
彼の乗っている車や行列の馬は、王のようでした。
蘇秦の兄弟や妻や兄嫁は、(恐れ入って)視線をそらし、決して蘇秦を見ようとはしませんでした。
(蘇秦に)ひれ伏して、側に仕えて食事の給仕をしました。
蘇秦は笑って言いました。
「どうして以前は威張っていたのに、今度はこんなに恭しく礼儀正しいのか」と。
兄嫁が言いました。
「あなた様の身分が高くお金持ちになったのを見たからです」と。
※つづく:
『鶏口牛後(秦喟然歎曰〜)』の書き下し文と現代語訳
単語・文法解説
| 而 | 置き字。文章の接続を表すもの。~して、~だけれどもの意味。 |
| 嫂 | 兄嫁。 |
| 従約 | 南北同盟。燕と趙の位置が南北関係にあったので、二国間の同盟を指す。 |
| 於 | 置き字。 |
| 昆弟妻嫂 | 兄弟、妻、兄嫁 |
| 不敢視 | 「不敢A」で「あえてAせず」と読み、「決して〜しようとしない」と訳す。 |
| 何前倨而後恭也 | 「何〜也」で「なんぞ〜や」と読み、「どうして〜なのか」と疑問の表現となる。 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。