平家物語
祇園精舎
案の如く五節果てにしかば、殿上人一同に申されけるは、
「夫雄劍(それいうけん)を帯して公宴に列し、兵杖を給て宮中を出入するは、皆是格式の礼を守る、綸命(りんめい)よしある先規なり。しかるを忠盛朝臣、或いは相伝の郞従、と号して、布衣(かうい)の兵を殿上の小庭に召し置き、或いは腰の刀を橫へ差いて、節絵の座につらなる、両条稀代いまだ聞かざる狼藉なり。事既に重畳せり。罪科尤(もっと)ものがれがたし。早く殿札をけづって、闕官(けつかん)、停任せらるべき」
由、おのおの訴へ申されければ、上皇大きに驚きおぼしめし、忠盛を召して御尋(おんたずね)あり。
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