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枕草子 原文全集「村上の先(前)帝の御時に」

著者名: 古典愛好家
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村上の先帝の御時に

村上の先帝の御時に、雪のいみじう降りたりけるを、様器に盛らせ給ひて、梅の花をさして、月のいとあかきに、

「これに歌よめ。いかがいふべき」


と、兵衛の蔵人に給はせたりければ、

「雪月花の時」


と奏したりけるこそ、いみじうめでさせ給ひけれ。

「歌などよむは世の常なり。かくをりにあひたることなむいひがたき」


とぞ、仰せられける。
 

同じ人を御供にて、殿上に人さぶらはざりけるほど、たたずませ給ひけるに、火櫃(ひびつ)に煙の立ちければ、

「かれは何ぞと見よ」


と仰せられければ、みてかへりまゐりて、
  
わたつうみの沖にこがるる物みれば、あまの釣(つち)してかへるなりけり

と奏しけるこそをかしけれ。蛙の飛び入りて焼くるなりけり。



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・枕草子 原文全集「村上の先(前)帝の御時に」

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萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 下」 新潮社
松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店

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