文野の少将もどきたる落窪の少将などはをかし。よべ、一昨日の夜もありしかばこそ、それもをかしけれ。足あらひたるぞにくき。きたなかりけむ。風などの吹き、あらあらしき夜来(き)たるは、たのもしくてうれしうもありなむ。
雪こそめでたけれ。
「忘れめや」
などひとりごちて、忍びたることはさらなり、いとさあらぬ所も、直衣などはさらにもいはず、うへのきぬ、蔵人の青色などの、いとひややかにぬれたらむは、いみじうをかしかべし。緑衫なりとも、雪にだにぬれなばにくかるまじ。昔の蔵人は、夜など人のもとにも、ただ青色をきて、雨にぬれても、しぼりなどしけるとか。今は昼だに着ざめり。ただ緑衫のみうちかづきてこそあめれ。衛府などのきたるは、まいていみじうをかしかりしものを。かく聞きて、雨にありかぬ人やあらむとすらむ。
月のいみじうあかき夜、紙のまたいみじう赤きに、ただ、
「あらずとも」
と書きたるを、廂にさし入りたる月にあてて、人の見しこそをかしかりしか。雨降らむをりは、さはありなむや。