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蜻蛉日記原文全集「これをはじめにてまたまたもおこすれど」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

これをはじめにてまたまたもおこすれど

これをはじめにてまたまたもおこすれど、返りごともせざりければ、又

おぼつかなおとなきたきの水なれや ゆくへもしらぬせをぞたづぬる

これを、

「いまこれより」


といひたれば、しひたるやうなりや、かくぞある。
 
ひとしれずいまやいまやとまつほどに かへりこぬこそわびしかりけれ

とありければ、例の人

「かしこし。をさをさしきやうにもきこえんこそよからめ」


とて、さるべき人して、あるべきに書かせてやりつ。それをしもまめやかにうちよろこびて、しげうかよはす。また添へたる文みれば

はまちどりあともなぎさにふみみぬは われをこすなみうちやけつらん

この度も例のまめやかなる返りごとする人あれば、まぎらはしつ。又もあり

「まめやかなるやうにてあるも、いと思ふやうなれど、このたびさへなうは、いとつらうもあるべきかな」


など、まめ文のはしに書きて添へたり。

いづれともわかぬ心はそへたれど こたびはさきにみぬ人のがり

とあれど、例のまぎらはしつ。かかれば、まめなることにて月日はすぐしつ。


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・蜻蛉日記原文全集「これをはじめにてまたまたもおこすれど」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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