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枕草子 原文全集「草は」

著者名: 古典愛好家
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草は

草は菖蒲(さうぶ)。菰(こも)。葵、いとをかし。

神代よりして、さるかざしとなりけむ、いみじうめでたし。

もののさまもいとをかし。


沢瀉(おもだか)は、名のをかしきなり。

心あがりしたらむと思ふに。三稜草(みくり)。蛇床子(ひるむしろ)。苔。雪間の若草。こだに。

かたばみ、綾の紋にてあるも、ことものよりはをかし。


あやふ草は、岸の額に生ふらむも、げにたのもしからず。

いつまで草は、また、はかなくあはれなり。

岸の額よりも、これはくづれやすからむかし。

まことの石灰などには、え生ひずやあらむと思ふぞわろき。


ことなし草は思ふことをなすにやと思ふもをかし。

忍ぶ草いとあはれなり。

道芝いとをかし。茅花(つばな)もをかし。蓬いみじうをかし。

山すげ。日かげ。山藍。浜木綿(はまゆふ)。葛(くず)。笹。青つづら。

なづな。なへ。浅茅(あさぢ)、いとをかし。


蓮(はちす)は、よろづの草よりもすぐれてめでたし。

妙法蓮花のたとひにも、花は仏にたてまつり、実は数珠(ずず)につらぬき、念仏して、往生極楽の縁とすればよ。

また、花なきころ、みどりなる池の水に、紅に咲きたるもいとをかし。

翠翁紅(すいおうこう)とも詩につくりたるにこそ。

唐葵(からあふひ)、日のかげにしたがひてかたぶくこそ、草木といふべくもあらぬ心なれ。

さしも草。八重葎(やへむぐら)。つき草、うつろひやすなるこそうたてあれ。



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・枕草子 原文全集「草は」

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松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店
萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 上」 新潮社

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