宋代の社会と文化で押さえておきたいポイント
※赤字部分が問題に出そうな部分です。赤色の暗記シートなどで隠して見てください。
宋代の社会
・宋代に入ると、五代十国の
武断政治から
文治主義へと変わり、官僚が重要な役割を担うようになった。
・宋代以降、
科挙の合格者を出した家を
官戸といい、役の減免などの特権が一代限りで与えられた。また、新興の地主層として
形勢戸も出現し、
官戸形勢戸として多くの官僚を輩出し、社会的支配層となっていった。
・社会的支配層だった地主や官僚は、
荘園を保有し、佃戸という耕作者を使用し利益を上げた。また、この時代ベトナムの
チャンパーから
占城稲という稲がもたらされ、
囲田(圩田・湖田ともいう)という水利田を中心に稲作が進んだ。宋の中期以降稲作が
長江下流域の
蘇州や
湖州などで盛んになり、この様子は
「蘇湖(江浙)熟れば天下足る」と表現された。なお、
明・清代には稲作の中心地が
長江中流域に移り、
「湖広熟すれば天下足る」といわれた。
・中国の歴代王朝では城壁の内側の
市に対して、城外の
草市が非公認の交易所として発生した。宋代に入ると、これら各地の草市が発展し
鎮という地方の小都市や
市に発展していった。
・宋代では交易が活発に行われ、世界ではじめて
交子という紙幣が製作された。この紙幣は唐の
飛銭から発達し、
北宋時代に四川の
成都で用いられ、後に政府が紙幣として発行した。
南宋時代になると、
会子という紙幣に変わったが、のちに盛んに発行され、南宋の経済を崩壊させていった。紙幣以外にも、
宋銭(銅銭)という
唐の
開元銭を元にした貨幣が作られ、遠く日本までもたらされた。
・商工業の発展とともに、同業商人の相互扶助を目的とした
行や手工業者の同業組合の
作が各地に作られた。
・唐代に、
広州にはじめて設置された
市舶司は長らく海上貿易を司り、宋代に整備され
泉州・温州・明州・杭州・秀州・密州など各地に設置された。これにより
南海貿易が盛んになり、イスラーム商人や中国商人など、国際的な交易が行われるようになった。
・漢の時代に伝わった
茶は、
魏晋南北朝時代に
江南、
隋・唐代に
広西・陝西に広まり、一般民衆に普及した。宋代になると喫茶の習慣は周辺民族にも広がり、茶の専売がたびたび行われるようになった。また、
広西省北部には
景徳鎮という窯業都市が唐・宋代に発達し、世界的に有名な陶磁器を作るようになった。
宋代の文化
・宋代には、新しい儒学として
宋学が生まれた。宋学とは。唐で成立した『
五経正義』以降、
訓詁学のみが主流の学派となっていることに反発し、
理気二元論に基づく実践倫理の新しい思想として宋学が成立した。宋学は『
太極図説』を書いた
北宋の
周敦頤が創始し、同じく北宋の
程顥・程頤兄弟に受け継がれ、
南宋の儒学者
朱熹(朱子)によって大成された。朱熹(朱子)は
四書を儒学の根本経典とし、
格物致知説、理気二元論、性即理説、大義名分論などを説き、『
四書集柱』『
資治通鑑綱目』などを著した。このように、宋学は朱熹(朱子)によって完成されたため、
朱子学とも呼ばれる。
・宋代に活躍した主な学者・政治家は以下である。
周敦頤 | 北宋の儒者で、宋学の創始者。『太極図説』を著す。 |
程顥 | 北宋の儒者で、王安石の新法に反対した。 |
程頤 | 北宋の儒者で、理気二元論を説いた。 |
朱熹 | 朱子とも言う。南宋で宋学(朱子学)を大成。『四書集柱』『資治通鑑綱目』を著す。 |
陸九淵 | 陸象山ともいう。南宋の儒者。朱熹と対立し、のちの陽明学に影響を与える。 |
司馬光 | 北宋の儒者・政治家。旧法党の中心。『資治通鑑』を著す。 |
欧陽脩 | 北宋の政治家。『新唐書』『新五代史』を編纂。 |
蘇洵 | 北宋の学者。『太常因革礼』を編纂。 |
蘇軾 | 北宋の詩人・政治家。王安石の新法に反対した。「赤壁の賦」を詠んだ。 |
蘇轍 | 北宋の政治家。王安石の新法に反対した。 |
曾鞏 | 北宋の政治家。王安石と親交があったが、新法には反対した。 |
・唐から宋にかけて活躍した、唐の
韓愈、柳宗元、宋の
欧陽脩、蘇洵、蘇軾、蘇轍、曾鞏、王安石の八人を
唐宋八大家といい、このうち
蘇洵、蘇軾、蘇轍は親子(それぞれ父、長子、次子)であり、これを
三蘇ともいう。
・宋代には周辺諸国の外圧が高まったため、
中華思想・華夷思想という考えがひろまった。
・文学や演劇の分野でも、
詞や
雑劇といった新しい文化がはじまった。
・唐の
玄宗が設置した
画院(翰林図画院)は、五代、宋代に奨励され、
宮廷絵画の発達に多大な貢献をした。画院に所属した画家が中心となり描いた絵画を
院体画といい、絵画の専門家でない
文人が描いた絵画を
文人画という。院体画を
北宗画(北画)、文人画を
南宗画(南画)ともいう。文人画が元代末に完成され、南宗画となった。宋代の著名な画家は以下である。
徽宗 | 北宋の皇帝・画家。「桃鳩図」を描いた。 |
夏珪 | 南宋の院体画家。山水画を得意とした。 |
馬遠 | 南宋の院体画家。夏珪と並び、山水画を描いた。 |
梁楷 | 南宋画院の画家。元筆体という画法をつくった。 |
李公麟 | 北宋の文人画家。「五馬図」を描いた。 |
米芾 | 北宋の文人画家。宋代四大家の1人。 |
牧谿 | 宋末、元初の画家・禅僧。室町時代日本の水墨画に影響を与えた。 |
・この時代、喫茶の習慣が中国のみならず周辺諸国経も広がり、同時に陶器も発達し、
宋磁が盛んに作られた。宋磁は
青磁と
白磁があり、ともに海外に輸出され、美しい美術工芸品として各地で重宝された。
・宋代の発明としては、
硝石・硫黄・木炭を混合して作る
火薬や、
羅針盤(磁針)、
木版印刷などがあった。11世紀後半の北宋に生きた
畢昇は、
活版印刷を発明したとされる。
・宋の
太祖は、仏教経典の集大成である『
大蔵経』を木版印刷し、
成都で刊行したとされる。