タンザニア連合共和国
タンザニア連合共和国(以下「タンザニア」、英語ではUnited Republic of Tanzania)は、東アフリカに位置する共和制国家です。首都はドドマです。
このテキストでは、タンザニアの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「スポーツ」、「日本との関係」の8つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。
1. 国土
タンザニアは、東アフリカに位置し、その総面積は94.5万平方キロメートルです。これは日本の約2.5倍に相当します。国土は多様な地形を有しており、沿岸部の平野、中央高原、そして北部や南部の高地から構成されています。アフリカ最高峰であるキリマンジャロ山(標高5,895メートル)はタンザニア北東部に位置しております。
また、アフリカ大陸の主要な湖であるビクトリア湖(アフリカ最大の湖)、タンガニーカ湖(アフリカで2番目に深い湖)、マラウイ湖(ニャサ湖)の一部がタンザニア領内に含まれています。
主要な天然資源には、金、ダイヤモンド、天然ガス、リン酸塩、石炭などが挙げられます。
2. 人口と人種
タンザニアの総人口は、2024年時点で6,856万人と推定されています。人口の大部分はアフリカ系であり、約130の民族グループが存在します。主な民族としては、スクマ族、ニャキューサ族、ハヤ族、チャガ族、ザラモ族などが挙げられます。少数民族として、アジア系、ヨーロッパ系、アラブ系の人々も居住しています。
3. 言語
タンザニアの国語はスワヒリ語であり、公用語として英語も広く使用されています。国内の多様な民族グループにより、それぞれ独自の言語が話されていますが、スワヒリ語が国民共通のコミュニケーション言語として機能しています。
4. 主な産業
タンザニア経済は多様な分野で構成されています。総付加価値の約4分の1を農業が占め、工業が約3分の1、サービス業が残りの割合を占めています。
農業は国民の約3分の2が従事する最大の雇用源であり、主要な農産物にはトウモロコシ、米、小麦、コーヒー、綿花、カシューナッツ、茶、タバコなどが含まれます。
工業分野では、セメント、織物、ビール、たばこ、砂糖などの製造が行われています。
2024年時点の一人当たりの国民総所得(GNI)は1,200米ドルです。
5. 主な観光地
タンザニアは豊かな自然と文化遺産を有しており、多くの観光客を惹きつけています。主要な観光地としては、セレンゲティ国立公園が挙げられます。ここでは、毎年恒例のヌーの大移動をはじめとする壮大な野生動物の生態を観察できます。
また、ザンジバル島は、スパイス貿易の歴史を持つ文化的な街並みと、美しいビーチが特徴です。
その他、ンゴロンゴロ保全地域、キリマンジャロ山なども人気の観光地です。
6. 文化
タンザニアの文化は、約130の多様な民族グループと、歴史的な交易によるアフリカ、アラブ、インドの影響が融合して形成されています。
■食事
タンザニアの食文化は、その地理的および歴史的背景を反映しており、地域によって異なる特徴が見られます。主食は「ウガリ」と呼ばれるトウモロコシの粉を練って作られる粥状のものが一般的で、様々なシチューやソースと共に食されます。特に沿岸部では、米がココナッツミルクやスパイスと共に調理された「ワリ」も広く食べられています。その他、キャッサバ、調理用バナナ(プランテン)、サツマイモ、豆類なども主食として親しまれています。
肉料理では、スワヒリ語で「焼き肉」を意味する「ニャマ・チョマ」が非常に人気があります。これは主にヤギ肉や牛肉をシンプルに塩コショウで味付けし、直火で焼いたもので、カチュンバリ(玉ねぎとトマトのサラダ)やウガリと共に提供されます。ザンジバルでは、スパイスが豊富に使われた料理が多く、インドやアラブの食文化の影響が色濃く見られます。屋台料理も盛んで、「ウロジョスープ」(ピリ辛スープ)、「ザンジバルミックス」(揚げスナックの盛り合わせ)、「ムシカキ」(マリネした肉の串焼き)などが楽しまれています。調理法は茹でる、蒸す、焼くことが多く、油や砂糖の使用は控えめな傾向があります。食事は右手を使って食べる習慣が広く見られ、食事を分かち合うことはコミュニティにおける重要な行事とされています。
■芸術
タンザニアの芸術は、伝統と現代が融合した多様な表現形式を有しています。国立芸術評議会(BASATA)は、国内外における芸術活動の振興、フォークロア表現を含む芸術作品の制作・普及を支援しています。
■マコンデ彫刻
タンザニア南部からモザンビークにかけて居住するマコンデ族によって作られる木彫刻は、国際的にも高い評価を受けています。特に「シェタニ(精霊)」をモチーフにした一刀彫りの作品は、アフリカブラックウッド(黒檀)から彫り出され、それぞれ異なる姿を見せることで知られています。
■ティンガティンガ
20世紀後半にダルエスサラームで誕生した絵画スタイルで、タンザニアの画家エドワード・サイド・ティンガティンガに由来します。硬いボードに自転車用塗料を用いて描かれ、鮮やかで彩度の高い色彩が特徴です。サファリの野生動物などをナイーブかつユーモラスなタッチで描いたものが多く、観光客に人気のお土産となっています。下書きをせずに6色以内のエナメルペンキで描かれることが多く、その制作手法も特徴的です。
■カンガとキテンゲ
東アフリカの女性に愛用されるカンガは、長方形の一枚布で、民族衣装としてだけでなく、生活の様々な場面で活用される万能布です。カラフルなアフリカンプリント柄で、周囲には縁取りが施され、スワヒリ語のメッセージ(カンガセイイング)が描かれているのが特徴です。キテンゲも同様のアフリカンプリント布で、洋服などに加工されることもあります。
■音楽と舞踊
タンザニアの音楽は、その多様な民族性と歴史を反映しており、数多くの伝統的なジャンルが存在します。BASATAによって定義された主な音楽ジャンルには、ンゴマ、ダンシ、クワヤ(合唱)、タアラブがあり、近年ではボンゴフレーバー(ポップ)やシンゲリが加わっています(2001年追加)。
■ンゴマ
「踊り」「太鼓」「行事」を意味するバントゥー語に由来し、伝統的な音楽と舞踊の総称です。ドラムが重要な役割を担い、ヒップの動きを特徴とする民族舞踊が多く見られます。特定の儀式や祝祭で披露され、共同体の繋がりを強化する役割も持ちます。スクマ族の「ブゴボゴボ」(ヘビの踊り)、パレ族の「イジャンジャ・ダンス」、ジグア族の「ウカラ・ダンス」(狩猟の踊り)など、民族ごとに独自の舞踊があります。
■タアラブ
スワヒリ語の詩にバンド演奏が伴う歌唱形式で、特に海岸部のスワヒリ文化圏で人気があります。弦楽器が多く用いられ、観客も踊りや手拍子で参加することが奨励されます。
■ボンゴフレーバー
現代のタンザニアのポップミュージックであり、若者を中心に人気を集めています。
7. スポーツ
タンザニアで最も人気のあるスポーツはサッカーであり、タンザニアサッカー連盟(Tanzania Football Federation: TFF)がその発展を主導しています。国内リーグであるタンザニア・プレミアリーグは多くのファンを魅了し、ワタンボラ・リーグやアザム・スポーツ・クラブといったチームが国内外で活躍しています。サッカーは国民的スポーツとして、地域社会の結束にも大きく貢献しています。
陸上競技もまた、タンザニアが国際舞台で実績を上げている分野です。陸上競技タンザニア(Athletics Tanzania: AT)が国内の陸上競技を統括しており、マラソンや長距離走において特に多くの才能を輩出してきました。オリンピックやコモンウェルスゲームズなどの国際大会には、陸上競技から多くの選手が参加しています。
その他、バスケットボール、クリケット、ボクシングなども人気があり、それぞれの国内連盟が活動しています。スポーツ開発においては、特に青少年へのスポーツ機会の提供や、才能ある選手の育成に力が入れられています。マラヤ・スポーツ開発大学(Malya College of Sports Development)のような機関は、スポーツ指導者の育成やスポーツ科学の研究を通じて、国のスポーツレベル向上に貢献しています。
ザンジバルにおいては、ザンジバルスポーツ省が独自にスポーツ行政を担っており、島内でのスポーツ活動の振興とインフラ整備を進めています。
8. 日本との関係
日本とタンザニア連合共和国の関係は、長年にわたる経済協力と人的交流によって強化されてきました。特にスポーツ分野や多岐にわたる経済支援を通じて、両国間の協力関係は深化しています。
■経済協力
日本はタンザニアの主要な開発援助国の一つであり、教育、保健、インフラ整備など様々な分野で支援を行っています。2020年度までの累計で、日本はタンザニアに対し以下の資金協力と技術協力を実施しています。
・有償資金協力: 800.84億円
・無償資金協力: 1,849.33億円
・技術協力: 972.68億円
これらの支援は、病院や学校の建設、道路や電力網の整備、農業技術の向上など、タンザニアの持続可能な開発に不可欠な基盤構築に貢献しています。2019年のデータによると、タンザニアへの主要援助国の中で日本は第5位に位置しており(5,909万ドル)、その貢献度は国際的にも認識されています。
■スポーツを通じた交流
日本とタンザニアは、スポーツ分野でも協力関係を築いています。具体的には、日本の国際協力機構(JICA)などを通じたスポーツ指導者の派遣や、タンザニア人選手を日本に招いての研修などが挙げられます。これは、タンザニアのスポーツ技術向上だけでなく、両国間の文化理解と友好関係の深化にも寄与しています。例えば、柔道やサッカーなどの分野で、日本の専門家がタンザニアのコーチや選手に指導を行う事例が見られます。また、オリンピック・パラリンピック競技大会を契機としたホストタウン交流を通じて、日本の自治体とタンザニアの地域社会との間で草の根レベルの交流が促進されることもあります。
■要人往来と二国間関係の強化
両国間のハイレベルな交流も活発に行われています。近年の動きとして、2025年5月29日には日・タンザニア首脳会談が開催され、両国間の協力関係のさらなる強化が議論されました。また、2025年5月28日には、両国間で二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)の構築に関する協力覚書が署名されました。これは、気候変動対策における協力を推進し、温室効果ガス排出削減に貢献するものです。
さらに、2025年5月23日にはタンザニアのマジャリワ首相が訪日し、経済や開発に関する議論が行われました。これらの要人往来は、両国間の政治的・経済的関係を深め、多岐にわたる分野での協力の可能性を広げています。2025年1月には、日本の藤井外務副大臣がタンザニアを訪問しており、貿易・投資促進のための官民合同ミッションも実施されるなど、経済関係の強化に向けた具体的な取り組みが進められています。