背理法を用いた命題の証明
ここでは、「√5が無理数であることを背理法を使って証明する問題」を通して、背理法への理解を深めていきましょう。背理法について未学習の人は、「
命題[背理法を用いた証明と練習問題]」で学習してからこちらのテキストに戻ってきてください。
「○○が無理数であることを、背理法を用いて証明」は、よく出題される形式の問題です。解き方のパターンが決まっているので、しっかりと解法をマスターしましょう。
問題
「√5が無理数であることを、背理法を用いて証明しなさい。」
解法
まず命題を整理します。説明をしやすくするために、「√5である」を条件p、「無理数である」を条件qとします。つまり与えられた命題は、「p⇒q」となります。
これを背理法を用いて証明するわけですから、「

」と仮定して、ここに矛盾がないかどうかをチェックしていきましょう。
「

」を言葉で表すと、「無理数ではない」すなわち「有理数である」となるので、有理数についてちょっと思い出してみましょう。
有理数とは、「整数Aと、0ではない整数Bを使って、"A/B"の形で表す数のこと」でした。(1/3、0.3など)
√5が有理数ということは、整数Aと、0ではない整数Bを使って
√5=A/B ー①
と表すことができます。ちなみにA/Bは、これ以上約分することができない"
既約分数"です。
①を変形して2乗していきます。
"√5=A/B"より"B√5=A"
これを2乗して
(B√5)²=(A)²
5B²=A² ー②
②式の左辺は5の倍数ですね。ですので必然的に②式の右辺(A²)もまた5の倍数となります。ここで、「
A²が5の倍数ならば、Aは5の倍数である」という性質を用います。(※ほかの背理法の問題で証明されていることなので、ここではこの性質の証明は省きます。)
そこでAを、整数kを用いて
A=5kとおき、②式に代入をすると
5B²=A²
5B²=(5k)²
5B²=25k²
B²=5k²
つまりB²が5の倍数であることがわかりますね。先ほどと同じように、「
A²が5の倍数ならば、Aは5の倍数である」という性質を用いると、Bもまた5の倍数であることがわかります。
以上のことから、AとBは5の倍数であることがわかりました。これは、「A/Bは有理数(既約分数)」と仮定したことに矛盾しますね。(AもBも5の倍数なので、少なくともA/Bは5で約分できるとなります。)
ゆえに、「

」は成り立ちません。このことから、「p⇒q」すなわち「√5は無理数である」が証明されました。