『志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りて出づる有明の月』現代語訳と解説
このテキストでは、
新古今和歌集で詠まれている歌「
志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りて出づる有明の月」の原文、わかりやすい現代語訳・口語訳と解説、品詞分解を記しています。
藤原家隆が詠んだ歌です。
原文
志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りて出づる有明の月
現代語訳(口語訳)
志賀の浦。(夜が更けることで海面が凍って)波打ち際が遠ざかっていく。その波の間から、波と同じく凍りついたかのように光を放って上がって行く有明の月よ。
ひらがなでの読み方
しがのうらや とほざかりゆく なみまより こほりていづる ありあけのつき
解説・鑑賞のしかた
寒い地域の冬になると、夜になるにつれて海が凍って行きます。岸辺から凍っていくので、夜が更けると波打ち際が昼間よりももっと岸から離れたところになります。「遠ざかりゆく波間」とはこのことを表しています。そして、その遠く離れた波間から、月が凍ったように冷たい光をはなちながら上がって行ったということですね。
単語
志賀の浦 | 近江国の歌枕。志賀の浦と言えば近江国のことを指す |
遠ざかりゆく波間 | 氷は岸の方からはっていくので、夜が更けるにつれてだんだんと岸から遠くなっていく波間のこと |
凍りて出づる | 凍ったように、冷え冷えとした光をはなっている |
有明の月 | 夜遅くに出て翌朝まで残る下弦の月のこと |
品詞分解
※名詞は省略してあります。
志賀の浦 | ー |
や | 間接助詞 |
遠ざかりゆく | カ行四段活用・連体形 |
波間 | ー |
より | 格助詞 |
凍り | ラ行四段活用 |
て | 接続助詞 |
出づる | ダ行下二段活用・連体形 |
有明 | ー |
の | 格助詞 |
月 | ー |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。