現代語訳
好 雨 知 時 節
よい雨というのは降るべき時を心得ている。
当 春 乃 発 生
春になると降り始めるのだ。
※「雨が万物の生育を始める」とも解釈できる。
随 風 潜 入 夜
(その雨は)風に吹かれながら、静かに夜まで降り続き
潤 物 細 無 声
細やかで音も立てずにすべての物を潤す。
野 径 雲 倶 黒
野の小道も雲も皆暗く
江 船 火 獨 明
(その景色の中にある)川に浮かぶ船の灯だけが明るい。
暁 看 紅 湿 處
明け方に紅色に潤っているところを見ると
花 重 錦 官 城
(しっとりと濡れた)花が、錦官城に重たげに(咲いている)。
単語
| (※1)発生 | 「雨が降り始める」、または「雨が万物の生育を始める」 |
| (※2)暁 | 明け方 |
| (※3)錦官城 | 中国の都市「成都」のこと |
文法解説
■形式:五言律詩
4つの句からなる詩を
絶句(ぜっく)といい、8つの句からなる詩を
律詩(りっし)といいます。例えばこの詩では、「好雨知時節」を1句と考えます。この詩は8つの句からなるので、律詩です。
また、絶句のうち1つの句が5文字からなるものを
五言律詩(ごごんりっし)といい、1つの句が7字からなるもの
七言律詩(しちごん律詩)といいます。
以上から、この句は「
五言律詩」となります。
■押韻:生・声・明・城
押韻(おういん)とは、漢詩を読んだ時に一定のリズムが出るように、同じ響きの言葉を句の最後に置くことです。この詩では、
生(Sho)、声(Sho)、明(Myo)、城(Jyo)
が該当します。カッコの中は日本語の音読みです。だいたいが日本語の音読みで判別することができますが、本来は、作者が生きた時代の発音で韻を踏んでいるかどうかを確認します。よって、日本語の音読みだけでは判別ができない押韻も存在します。
押韻にはルールがあります。
五言律詩では、原則として第2句末、第4句末、第6句末そして第8句末に同じ響きの言葉が置かれます。
■対句
対句とは、句を強調するために、形や語感が似たペアの句を作る技法です。ペアとなる句は、文法構造や用いている文字が呼応しているなどの特徴があります。
五言律詩では原則として「第3句と第4句」、「第5句と第6句」が対句となります。
■第3句と第4句
随 風 潜 入 夜
潤 物 細 無 声
■第5句と第6句
野 径 雲 倶 黒
江 船 火 獨 明