はじめに
民主主義は、歴史上さまざまな人々が犠牲を払いながら獲得した政治制度です。
このテキストでは、人権の成立に大きな役割を果たした
市民革命の歴史を解説したいと思います。
民主主義の成立過程
民主主義の成立過程はどのようなものだったのか、基本的人権の成立を軸に、重要な出来事を見ていきましょう。
古代ギリシア
民主主義の起こりは、
古代ギリシアでした。
古代ギリシアでは、
奴隷制のもとで
ポリス社会が成り立っており、女性の参政権も認められていませんでした。
現在のような民主主義ではありませんでしたが、市民の参政権や民会での話し合いが国政を左右することなど、民主主義の原理を創りだしたといえるでしょう。
マグナ=カルタ(大憲章)
マグナ=カルタは、1215年に時の国王ジョンにイギリスの封建貴族が認めさせた憲章です。
この憲章は、63章から成り立っていて、貴族たちのさまざまな特権を保護するような内容でした。
このマグナ=カルタの成立は、以後のイギリス議会の権利拡張の元になりました。
絶対王政
絶対王政とは、没落しつつあった封建貴族と、新興市民(ブルジョワジー)の権力の均衡を取る形で絶対的な王権が確立した時代でした。
絶対王政下の国王は、
王権神授説を唱え自らの権力を正当化し、
官僚制と
常備軍を維持し、
重商主義政策を推し進め、封建貴族や国民に制約されない政治を行いました。
イギリス市民革命
絶対王政に苦しんだ時代、まずイギリス市民が立ち上がりました。イギリスでは2つの市民革命が起こります。
■清教徒革命(1642~49)
この革命は、自由を求めた市民が、専制君主
チャールズ1世を処刑した革命です。その結果、短い間ですがイギリスに共和制の時代が訪れました。
■名誉革命(1688)
共和制の後、独裁政治を行った
クロムウェルが処刑されたます。クロムウェルの処刑後、イギリスには王政が復活しました。その後チャールズ2世、ジェームズ2世という王が続きますが、次第に専制政治へとなっていったため、議会が彼を追放し、新王
ウィリアム3世を即位させました。ウィリアム3世は即位後、国民の生命・財産の安全、人身の自由を定めた権利の章典を制定しました。
アメリカ独立革命
続いて、イギリスの植民地だったアメリカ大陸で革命が起こります。
■ボストン茶会事件(1773)
本国の不当な搾取に、植民地の人々が立ち上がり、ボストン湾にイギリス向けの紅茶茶葉を投げ込んだ事件です。独立革命のきっかけとなりました。
■大陸会議(1774~75)
植民地の人々が、大陸会議を開き、自分たちの権利を正式に宣言しました。
■独立戦争(1775~83)
イギリス本国からの独立を求めて、総司令官
ジョージ=ワシントンを中心とした独立軍が戦争を開始します。
■独立宣言(1776)
独立戦争のさなか、
ジェファーソンによって起草され、革命権(抵抗権)を主張し、不当に抑圧する本国政府への抵抗の正当性を明らかにしました。
■独立の承認(1783)
パリ条約によって、イギリスがアメリカの独立を承認しました。
■合衆国憲法(1787)
独立後、憲法制定議会が開かれ、
合衆国憲法が制定されました。合衆国憲法の成立によって、連邦制度、三権分立制度、二院制、大統領制などの各制度が定められ、アメリカ合衆国の礎となりました。
フランス革命
アメリカ独立革命に触発され、フランスで革命が起こりました。背景にあったのは
アンシャン=レジーム(旧制度)と言われる制度への反発でした。アンシャン=レジームでは少数の特権階級が、国富のほとんどを握るという状況が続いていたので、市民は
国民議会を成立させ、国民主権の革命を起こします。
バスティーユ牢獄襲撃後、国民議会は国民主権、自由・平等、所有権、三権分立などを記した
フランス人権宣言を決議し、国王
ルイ16世は処刑されます。フランス人権宣言はその後、世界各地の人権思想の基礎となりました。
(フランス人権宣言)
| 国 | 年代 | 成立 | 特徴 |
マグナ=カルタ | 英 | 1215 | 国王が承認 | 貴族の特権を承認 |
権利の請願 | 英 | 1628 | 議会決議 | 国民の基本権を確認 |
審査法 | 英 | 1673 | 議会決議 | 官吏・議員を英国国教徒に限定 |
人身保護法 | 英 | 1679 | 議会決議 | 不当逮捕禁止・裁判を受ける権利 |
権利の章典 | 英 | 1689 | 議会決定を国王公布 | 生命・財産の安全、言論の自由 |
バージニア権利の章典 | 米 | 1776 | 憲法起草委員会 | 出版・信教・人身の自由 |
独立宣言 | 米 | 1776 | 大陸会議 | 革命権の主張 |
合衆国憲法 | 米 | 1787 | 憲法制定会議 | 連邦制度、三権分立制、二院制、大統領制 |
人権宣言 | 仏 | 1789 | 国民議会 | 国民主権、自由・平等、所有権、三権分立 |
おわりに
以上、民主政治成立の歴史をざっくりと解説しました。興味があれば、世界史の教科書も平行して読んでみると、政治経済の理解が深まると思います。