はじめに
政治経済の中の「政治」分野を理解する上で重要なのが、民主政治の基本原則を理解することです。このテキストでは、民主政治とは一体どのような概念なのか見ていきましょう。
社会が成立するためには?
私たち人間は、根源的に自らの利益や目的のために行動するようになっています。だれとも関係を持たずに、一人で一生を終える人間がいるのであればそれが正しい姿なのかもしれません。
しかし、私たちは社会の中で生きています。他者と関わり合いを持たずに生活することは不可能です。
社会の中で生きる場合に、一人ひとりが自分の目的を達成するためだけに行動すればどうなるでしょう。
必ず他者と衝突し、紛争を生み出してしまいます。
この状況を回避するために、私たちの社会には
秩序が必要となります。
秩序というのは、社会や集団などが、望ましい状態を保つためのきまりのことです。
秩序は、ルールを作れば成立するものではありません。時には、ルールに従わない人もいるでしょう。
このルールを守るように強制することと、秩序を乱すものに
処罰を与える力が必要となります。このようにルールを強制する力を
権力と言います。
政治とは、権力とルールを用いて社会に秩序を創り、維持する活動のことを指します。
社会の秩序を維持を支える重要なまとまりが
国家で、国家内部のルールを
法と言い、国家において政治を行う機関を
政府と呼ぶのです。
民主主義とは
社会の維持のための秩序は、世界各地の文化や宗教に左右されながら、時代と共に変遷してきました。
ある時代では、王などの
為政者によってルールが決められていましたが、次第に国家を構成する
国民が自らの手でルールを作り出すという流れへと変わっていき、多数決によって国政が決められるようになっていきました。
これを民主主義と言います。
民主主義は、はじめ古代ギリシアの都市国家(ポリス)で始まりました。この時代、ギリシアでは市民の意志が政治にそのまま反映される
直接民主政治が行われていました。
(アテネのアクロポリス)
その後中世ヨーロッパでは
封建制度を元に国政が行われるようになり、長い間王族や貴族が人々を支配する状況が続きます。
17世紀になると、
国民国家というものが次第に成立し始めます。国民国家とは、ある領域と国民を支配する国家のことです。
この時代王権は最高なものとして認識され、国王は自分の権力が神から授かったものであることを主張します。これを「
王権神授説」と言います。
(王権神授説を唱えたルイ14世)
この絶対君主制に対抗して、力をつけ始めた
市民階級(ブルジョワジー)がさまざまな革命を起こしました。
イギリスの
名誉革命、
アメリカ独立革命、
フランス革命などの市民革命が
絶対君主制を崩壊させ、民主主義は再び国政のあり方として定着しました。
(フランス革命)
おわりに
民主主義は現在の私達の生活の中では当たり前の原理ですが、この制度は、多くの民衆の犠牲の上に成立したと言えます。