はじめに
現代社会の特質を示すものとして、大衆社会という言葉があります。
このテキストでは、大衆社会とはどのような社会で、どういった背景から成立したのか見て行きましょう。
大衆社会とは何か
大衆という言葉を辞書で引くと、
社会の大部分を占める一般の人々という意味を持っている事がわかります。
現在では、多くの国で、この一般の人々が社会勢力の大部分を占めるようになりました。
この社会を
大衆社会と言います。
大衆社会が現れた背景
この大衆社会はなぜ現れたのでしょう。
1つは、ヨーロッパで起こった
市民革命の影響で、民衆の社会参加が進んだことがあります。
また、その後19世紀になると、各国で選挙権の拡大が実現し、大衆の意思が政治に大きな影響を与えるようになりました。
2つ目は、
産業革命です。
イギリスで起こった産業革命は、人々の生活を根底から大きく変えました。機械化や工業化による大量生産・大量消費社会が始まったのです。
これにより、多くの人々は大都市に人口が密集し、生活の平準化・画一化が進みました。
3つ目は、
マス・コミュニケーション(マスコミ)の発達です。最初は紙を媒体としたものだけでしたが、第2次産業革命によって電気製品が生まれると、ラジオやテレビなど、情報を瞬時に多くの地域に伝えることが可能となり、均一な情報を多くの人々が受け取るようになったのです。
このように、近代化の進展によって、様々な技術革新や社会の変革が起こり、大衆社会が出現しました。
大衆社会の特徴
第二次世界大戦後、日本は高度経済成長期を経て急速に発展していきます。
経済成長とともに、人々の所得水準は上がり、同時に多くの人々は中流意識を持つようになりました。
中流意識とは1980年代から90年代にかけて日本人に典型的に見られた意識のことで、一億総中流という言葉で表現されることもあります。
また、経済成長とともに様々な組織が巨大化し、人々は組織の一員として管理されるようになりました。
伝統的なムラ社会の関係性は都市部で希薄化し、社会が匿名の人々で構成されるようになると、自分の信念や意思よりも、マスメディアの流す情報を重要視する傾向が強まりました。
その結果、自分以外の周囲の人間の行動を規範として行動しようとする多数の
他人指向型の人々が現れました。
他人指向型とは、人間の性格類型の一つで、アメリカの社会学者リースマンによって唱えられました。
大衆社会の課題
このような大衆社会は、多くの問題をはらんでいます。
他人指向型の人々は、常に周囲を気にし、マスメディアの情報を過度に信用するようになります。
その結果、個人が個性と主体性を失った孤独な群衆が出現することになります。
自主性や個人の判断力が欠落した大衆社会は、メディアの情報に大きく左右され、時に独裁的な権力を持つ政治家を支持することもあります。
こうした状況を避けるためにも、個性と主体性を維持しつつ、社会に参加する責任があるのです。