チャド共和国
チャド共和国(以下「チャド」、英語ではRepublic of Chad)は、アフリカ大陸中央部に位置する内陸国です。首都はンジャメナです。
このテキストでは、チャドの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「日本との関係」の7つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。
1. 国土
チャド共和国は、中央アフリカに位置する内陸国であり、総面積は1,284,000平方キロメートル。北にリビア、東にスーダン、南に中央アフリカ共和国、南西にカメルーンとナイジェリア、西にニジェールと国境を接しています。
地形は中央部に広がる乾燥した平野が特徴であり、北部には砂漠地帯が広がり、北西部には山脈が連なり、南部は低地となっています。気候は、南部が熱帯性気候であるのに対し、北部は砂漠気候であり、多様な環境を擁しています。
国土の最高地点はエミクシ山(3,445メートル)、最低地点はジュラブ窪地(160メートル)です。チャド湖は、ニジェール、ナイジェリア、カメルーンと共有する内陸湖であり、その面積は季節や年によって10,360平方キロメートルから25,900平方キロメートルまで変動します。
2. 人口と人種
チャドの人口は2022年時点で約1,770万人と推定されており、2025年には19,338,000人に達すると予測されています。
チャドには多様な民族が存在します。2014年から2015年の推定では、主な民族グループとその割合は以下の通りです。
■サラ族
Ngambaye/Sara/Madjingaye/Mbaye 30.5%
■カネンブ族
Kanembu/Bornu/Buduma 9.8%
■アラブ族
9.7%
■ワダイ族
Wadai/Maba/Masalit/Mimi 7%
■ゴラネ族
5.8%
■マサ族
Masa/Musseye/Musgum 4.9%
■ブララ族
Bulala/Medogo/Kuka 3.7%
■マルバ族
Marba/Lele/Mesme 3.5%
■ムンダン族
2.7%
■ビディヨ族
Bidiyo/Migaama/Kenga/Dangleat 2.5%
■ダジョ族
Dadjo/Kibet/Muro 2.4%
■トゥプリ族
Tupuri/Kera 2%
■ガブリ族
Gabri/Kabalaye/Nanchere/Somrai 2%
などです。これらの民族は、東アフリカ、中央アフリカ、西アフリカ、北アフリカからの祖先を持つとされています。
3. 言語
チャドの公用語はアラビア語とフランス語です。これら以外にも、南部で話されるサラ語を含む120以上の異なる言語や方言が存在しています。
4. 主な産業
チャドの経済は、石油を主要な天然資源としています。石油以外にも、ウラン、ナトロン、カオリン、チャド湖の魚、金、石灰石、砂利、塩などの天然資源が確認されています。主要な産業には、石油、綿織物、食肉加工、醸造、ナトロン(炭酸ナトリウム)、石鹸、タバコ、建設資材が挙げられます。
農業が経済の重要な部門であり、労働人口の80%以上が自給自足農業、牧畜、漁業に従事しています。2017年のGDP構成比では、農業が52.3%、工業が14.7%、サービス業が33.1%を占めていました。2024年の経済成長率は3.7%と推定されており、主に非石油部門(+4.6%)が牽引し、石油部門は控えめな成長(+1.4%)でした。サービス業が成長に3.0パーセントポイント、非石油工業が0.8パーセントポイント寄与しましたが、農業は深刻な洪水の影響でマイナス0.2パーセントポイントの寄与となりました。
5. 主な観光地
チャドには、ユネスコ世界遺産に登録されているエネディ山塊(Ennedi Massif)があります。エネディ山塊は、北東部に位置する砂岩の山塊であり、水と風の浸食によって形成された峡谷や谷が特徴的な景観を呈しています。崖、自然のアーチ、ピトン岩などで構成され、壮大な景色が広がっています。大規模な峡谷には常時水が供給されており、生態系、動植物、人間の生活を維持する上で不可欠な役割を果たしています。また、洞窟、峡谷、岩陰の表面には数千点の絵画や彫刻が描かれており、サハラ砂漠における最大の岩絵群の一つを形成しています。エネディ山塊は、その自然と文化の価値が評価され、2016年に「エネディ山塊:自然と文化の景観」としてユネスコ世界遺産に登録されました
6. 文化
チャドの文化は多様な民族グループと宗教によって形成されています。2014年から2015年の推定によると、人口の主な宗教構成は以下の通りです。
■イスラム教徒
52.1%
■プロテスタント
23.9%
■ローマカトリック
20%
■アニミスト
0.3%
■その他のキリスト教徒
0.2%
■無宗教
2.8%
■不明
0.7%
イスラム教は主に東部、北部、西部の住民に信仰され、南部の人々の多くはキリスト教徒またはアニミストです。
社会的な慣習としては、一夫多妻制が広く見られ、女性の39%が一夫多妻婚の関係にあります。これは法によっても認められています。女性器切除(FGM)は法的には禁止されているものの、依然として広範に行われており、チャドの女性の45%がこの慣習を受けています。特にアラブ族、ハジャライ族、ワダイ族では90%以上と高い割合で、サラ族(38%)やトゥブ族(2%)では低い割合で実施されています。
教育や訓練の機会において女性が平等な機会を得られていない状況が報告されており、正式な雇用を得ることが困難となっています。財産権や相続に関する法律はフランス法に基づいており、女性に対する差別はありませんが、地元の指導者が伝統的な慣習に基づき、相続事件の多くを男性に有利に裁定する傾向があります。
7. 日本との関係
日本とチャド共和国は、1960年8月に日本がチャドを承認して以来、外交関係を築いています。チャドには日本の大使館はなく、在カメルーン日本国大使館がチャドを兼轄しています。同様に、日本にはチャドの大使館がなく、在中華人民共和国チャド大使館が日本を兼轄しています。
■経済協力
経済関係においては、2021年の財務省貿易統計によると、チャドから日本への輸出額は0.10億円、日本からチャドへの輸入額は3.42億円でした。主な対日輸出品目は植物性原材料などで、主な対日輸入品目は機械類および輸送用機器、医薬品、電気機器などです。2023年2月現在、チャドに進出している日本企業はありません。
日本はチャドに対し、政府開発援助(ODA)を通じて支援を行っています。2021年度までの無償資金協力は82.48億円、技術協力実績は10.38億円に上ります。
■国家交流
政治的な関係では、2013年5月にデビー・イトゥノ大統領(当時)がTICAD V(アフリカ開発会議)出席のためチャド大統領として初めて訪日し、2016年5月には伊勢志摩G7サミットのアウトリーチ会合出席のため再来日し、首脳会談が実施されました。2018年5月には佐藤外務副大臣(当時)が、現職政務として初めてチャドを訪問し、デビー・イトゥノ大統領(当時)を表敬訪問し、シェリフ外相と会談を行いました。
2024年8月には、上川陽子外務大臣がチャドのアブドゥラマン・クラマラー外務・アフリカ統合・在外チャド人・国際協力大臣と会談し、チャドにおける大統領選挙が平和裏に実施されたことを歓迎し、今後の民政移管プロセスの進展への期待が表明されました。上川大臣は、スーダン難民を含む人口の1割を超える避難民を受け入れるなど、地域の平和と安定に果たすチャドの役割に敬意を表し、協力の継続を表明しました。両大臣は、翌年のTICAD9を見据え、日・チャド関係をさらに発展させることを確認し、国連安全保障理事会改革、ウクライナ情勢、拉致問題を含む北朝鮮情勢などの国際的な協力についても意見交換を行いました。
なお、日本の外務省は、チャド全土に対し、隣国との国境地帯に危険情報「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」を、その他全域(首都ンジャメナを含む)に危険情報「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」を発出しています(2027年7月現在)。カメルーン極北州との国境地帯及びチャド湖周辺では、「ボコ・ハラム」や「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」等のイスラム過激派組織が活発に活動しているためです。
2023年2月現在の在留邦人数は4人、2022年6月現在の在日チャド人数は3人とみられています。