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5_80 世界の様々な地域 / 各国の名称と位置・大陸

「コートジボワール共和国」について調べてみよう

著者名: 早稲男
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コートジボワール共和国

コートジボワール共和国(以下「コートジボワール」、英語ではRepublic of Cote d'Ivoire)は、西アフリカの共和制国家です。首都はヤムスクロです。

このテキストでは、コートジボワールの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「スポーツ」、「日本との関係」の8つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。


1.国土:多様な自然が織りなす大地

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コートジボワールは、西アフリカの大西洋岸に位置し、その面積は約32万2,463平方キロメートル(日本の約85%)です。北はマリとブルキナファソ、東はガーナ、西はリベリアとギニアに国境を接しています。南には約515キロメートルにわたる海岸線が広がり、ギニア湾に面しています。

国土は大きく4つの異なる自然地域に分けられます。

南部沿岸地域

熱帯雨林気候に属し、年間を通じて高温多湿です。ラグーン(潟湖)が多く見られ、かつての首都であり現在も経済の中心地であるアビジャンはこの地域に位置します。アビジャンは、高層ビルが立ち並ぶ近代的な都市景観と、活気あふれる市場やラグーンの水上交通が共存する、西アフリカ有数の大都市です。

南西部

熱帯雨林が広がり、生物多様性の宝庫として知られるタイ国立公園(ユネスコ世界自然遺産)があります。チンパンジーをはじめとする多くの希少な動植物が生息しています。

中部

サバンナ気候への移行帯にあたり、森林と草原が混在しています。政治上の首都であるヤムスクロはこの地域にあります。ヤムスクロには、世界最大級のキリスト教教会堂とされる「平和のノートルダム大聖堂」(Basilica of Our Lady of Peace of Yamoussoukro)が存在感を放っています。

北部

スーダン・サバンナ気候に属し、乾季と雨季が明瞭です。降水量は南部に比べて少なく、広大なサバンナが広がっています。コモエ国立公園(ユネスコ世界自然遺産)はこの地域にあり、多様な哺乳類や鳥類の生息地となっています。


このように、コートジボワールの国土は、南部の熱帯雨林から北部のサバンナまで、変化に富んだ自然環境を有しており、それぞれが独自の生態系と景観を育んでいます。


2.人口と人種:多様な民族が共生する社会

コートジボワールの人口は、増加傾向にあります。世界銀行によると、2023年の推定人口は約2,900万人です。人口増加率は比較的高く、若年層が多いピラミッド型の人口構成となっています。

コートジボワールは、60以上とも言われる多様な民族グループが共生する多民族国家です。これらの民族は、言語や文化、居住地域によって大きく4つのグループに大別されます。

アカン系

南東部を中心に居住し、バウレ族、アニ族などが含まれます。カカオ栽培など農業に従事する人々が多く、伝統的な首長制度が色濃く残る地域もあります。

クル系

南西部を中心に居住し、ベテ族、ゲレ族などが含まれます。森林地帯に暮らし、独自の文化や言語を持っています。

マンデ系(北部マンデ、南部マンデ)

北西部や中西部を中心に居住し、マレンケ族、ダン族(ヤクバ族)などが含まれます。商業や交易を得意とするグループもいます。

ヴォルタ(グル)系

北部を中心に居住し、セヌフォ族、ロビ族などが含まれます。サバンナ地帯で農業を営み、独特の彫刻や仮面芸術で知られています。

これらの主要な民族グループに加え、周辺国からの移民も多く暮らしており、特にブルキナファソ、マリ、ギニア、ガーナ、リベリアなどからの人々が経済活動などに従事しています。経済の中心地アビジャンは、国内外の多様な人々が集まるコスモポリタンな都市となっています。

宗教については、イスラム教(主に北部)、キリスト教(主に南部)、そして各民族固有の伝統宗教が信仰されています。CIA World Factbook(2020年推定)によると、イスラム教徒が約43%、キリスト教徒が約34%、伝統宗教などが約4%、無宗教が約19%となっています。宗教間の寛容性は比較的高く、異なる宗教を信仰する人々が共存しています。


3.言語:フランス語と豊かな地域言語

コートジボワールの公用語はフランス語です。植民地時代の影響により、行政、教育、メディア、ビジネスなど、公的な場面で広く使用されています。アビジャンなどの都市部では、日常生活でもフランス語が共通語として機能しています。

しかし、多民族国家であるコートジボワールでは、フランス語以外にも各民族グループが固有の言語を話しています。前述の4つの主要民族グループに対応するように、アカン語系の言語(バウレ語、アニ語など)、クル語系の言語(ベテ語など)、マンデ語系の言語(ジュラ語、マレンケ語、ダン語など)、ヴォルタ(グル)語系の言語(セヌフォ語など)が国内各地で話されています。

中でもジュラ語は、歴史的に交易言語として広まった経緯があり、民族を超えて北部や商業の場面で広く通用する地域共通語としての役割も担っています。

このように、コートジボワールでは公用語であるフランス語と、多様な地域言語が共存しており、言語的にも豊かな環境が形成されています。


4.主な産業:カカオ大国から多角化へ

コートジボワールは、独立以来、農業を基盤として経済発展を遂げてきました。特にカカオ豆の生産においては世界最大の生産国であり、世界の総生産量の約4割を占めています。カカオは国の経済を支える最も重要な輸出品目であり、多くの国民がその生産に従事しています。

カカオ以外にも、コーヒー(ロブスタ種)、天然ゴム、パーム油、カシューナッツ、綿花、バナナ、パイナップルなどの農産物の生産も盛んで、これらも重要な輸出品となっています。天然ゴムやカシューナッツの生産量も世界トップクラスです。

しかし、コートジボワール経済は、農産品の国際価格の変動に影響されやすいという脆弱性も抱えています。そのため、政府は経済の多角化を推進しています。近年は、鉱業(金、マンガン、ニッケルなど)、石油・天然ガス開発、建設、サービス業(金融、通信、運輸など)の成長が著しく、経済成長を牽引しています。

世界銀行によると、コートジボワールは過去10年間、安定した経済成長を維持しており、西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)内では最大の経済規模を誇ります。アビジャン港は西アフリカ地域の重要な貿易拠点としての役割を担っており、物流のハブとしても発展しています。

今後の課題としては、農業生産性の向上、加工業の育成による付加価値の向上、インフラ整備、貧困削減、若年層の雇用創出などが挙げられますが、豊富な天然資源と人的資源を背景に、持続的な経済発展が期待されています。


5.主な観光地:世界遺産と豊かな自然・文化

コートジボワールは、観光資源にも恵まれています。まだ日本人観光客には馴染みが薄いかもしれませんが、訪れる価値のある魅力的なスポットが数多く存在します。

タイ国立公園 (Tai National Park)

南西部に位置する西アフリカ最大級の原生熱帯雨林の一つで、1982年にユネスコ世界自然遺産に登録されました。絶滅危惧種のチンパンジーの観察ツアーや、コビトカバ、数々の霊長類、珍しい鳥類など、多様な野生生物との出会いが期待できます。豊かな生物多様性を体感できる貴重な場所です。

コモエ国立公園 (Comoé National Park)

北東部に広がるサバンナと森林が混在する広大な国立公園で、1983年にユネスコ世界自然遺産に登録されました(2017年に危機遺産リストから解除)。コモエ川流域に多様な生態系が育まれ、ゾウ、カバ、ライオン、多種多様なアンテロープや鳥類が生息しています。サファリ体験が可能です。

グラン・バッサムの歴史都市 (Historic Town of Grand-Bassam)

アビジャンの東に位置する、かつてのフランス植民地時代の首都です。19世紀末から20世紀初頭にかけて建設されたコロニアル様式の建築物が立ち並ぶ街並みは、その歴史的価値から2012年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。美しいビーチもあり、リゾート地としても人気があります。

ヤムスクロ (Yamoussoukro)

政治上の首都であり、初代大統領フェリックス・ウフェ=ボワニの出身地です。彼の名を冠したフェリックス・ウフェ=ボワニ財団や、前述の世界最大級の教会堂「平和のノートルダム大聖堂」は必見です。計画的に建設された都市であり、広々とした道路や人工湖が特徴的です。

マン (Man) 周辺地域

西部の山岳地帯に位置し、「18の山々の街」と呼ばれています。緑豊かな美しい景観が広がり、ラ・カスケード(La Cascade)と呼ばれる滝や、ダン・マスク・フェスティバルで知られるダン族(ヤクバ族)の文化に触れることができます。トレッキングにも最適な地域です。

アビジャン (Abidjan)

経済の中心地であり、活気あふれる大都市です。近代的なビル群、サン・ポール大聖堂(St. Paul's Cathedral)のユニークな建築、賑やかなトレシュヴィル市場やココディ市場、ラグーン沿いのレストランなど、多様な魅力があります。

これらの観光地は、コートジボワールの豊かな自然、多様な文化、そして歴史を体験する絶好の機会を提供してくれます。


6.文化:多様な民族が織りなす芸術と生活

コートジボワールの文化は、その民族の多様性を反映して非常に豊かです。音楽、ダンス、彫刻、織物、祭りなど、各民族が独自の伝統文化を育んできました。

音楽とダンス

コートジボワールは、アフリカ音楽シーンにおいて重要な役割を果たしてきました。ズグル (Zouglou) や クーペ・デカレ (Coupé-Décalé) といった、コートジボワール発祥のポピュラー音楽ジャンルは、アフリカ全土、さらにはヨーロッパでも人気を博しています。伝統音楽も健在で、太鼓(ジェンベなど)や木琴(バラフォン)、弦楽器(コラなど)を用いたリズミカルな音楽と、それにあわせたダイナミックなダンスは、祭りや儀礼に欠かせない要素です。

仮面と彫刻

特にセヌフォ族、ダン族、バウレ族などの仮面や彫刻は、美術的評価が高く、世界中の美術館でコレクションされています。これらの仮面や彫像は、単なる装飾品ではなく、儀式や社会的な行事において重要な宗教的・象徴的な意味を持っています。

織物

各地で伝統的な織物が生産されています。特にバウレ族のキンテ布(Kente)に似た織物や、セヌフォ族の泥染め(ボゴラン)などは、その美しいデザインと色彩で知られています。

食文化

主食は米や、キャッサバやヤムイモ、プランテン(料理用バナナ)を搗いて作るフフ (Fufu) やプラカリ (Placali) などです。これらに、ケジェヌ (Kedjenou)(鶏肉や魚と野菜の蒸し煮)、アチェケ (Attiéké)(発酵させたキャッサバのクスクス)、グリルした魚(ポワソン・ブレゼ)、ピーナッツソースを使った煮込み料理など、多彩なおかずを合わせて食べます。唐辛子やスパイスを効かせた料理が多いのも特徴です。アビジャンなどの都市部では、フランス料理の影響を受けたレストランも多くあります。

祭り

各民族が独自の祭りや儀礼を年間を通して行っています。例えば、マン周辺のダン族の仮面祭りや、アビッサン族の世代交代儀礼(Fête de génération)などが有名です。これらの祭りは、共同体の絆を深め、文化を次世代に継承する重要な機会となっています。

コートジボワールの文化は、伝統と現代性が融合し、常に新しい表現が生まれているダイナミックなものです。


7.スポーツ:サッカーへの情熱

コートジボワールで最も人気のあるスポーツは、間違いなくサッカーです。国民のサッカーに対する情熱は非常に高く、「レ・ゼレファン(Les Éléphants)」(象たち)の愛称で親しまれるコートジボワール代表チームは、国民的な英雄です。

代表チームは、アフリカネイションズカップで3度(1992年、2015年、2023年)優勝しており、アフリカの強豪国として知られています。特に自国開催となった2023年では、国中が熱狂に包まれ見事優勝を果たしました。FIFAワールドカップにも3大会連続(2006年、2010年、2014年)で出場を果たしました。ディディエ・ドログバ選手やヤヤ・トゥーレ選手など、世界的に有名な選手を数多く輩出してきました。国内リーグも存在し、多くの若者がプロサッカー選手を目指しています。

サッカー以外では、陸上競技、バスケットボール、ラグビー、ハンドボールなども行われています。特に陸上競技では、女子短距離のミュリエル・アウレ選手やマリー・ジョゼ・タ・ルー選手などが世界レベルで活躍しています。

スポーツ(特にサッカー)は、多様な民族を一つにまとめる unifying force としても機能しています。


8.日本との関係:友好と協力の絆

日本とコートジボワールは、1960年のコートジボワール独立以来、良好な友好関係を築いています。

外交関係

日本はアビジャンに大使館を、コートジボワールは東京に大使館を設置しています。両国は、国際場裡においても協力関係にあります。

経済協力

日本は、国際協力機構(JICA)を通じて、コートジボワールに対し長年にわたり経済協力を行っています。特に、保健医療(母子保健改善、感染症対策)、教育(小学校建設、理数科教育強化)、農業(稲作振興)、インフラ整備(道路、港湾、電力)などの分野で、技術協力や資金協力(円借款、無償資金協力)を実施してきました。これらの協力は、コートジボワールの持続的な発展と国民生活の向上に貢献しています。

貿易

日本はコートジボワールから主にカカオ豆やコーヒー豆、天然ゴムなどを輸入しています。日本からコートジボワールへは、自動車や機械類などを輸出しています。

文化交流

学術交流や文化イベントなどを通じた交流も行われています。アビジャン日本人学校が存在し、在留邦人の子弟教育を支えています。

日本国外務省によると、コートジボワールに在留する日本人の数は約200名(2023年10月現在)で、主に企業関係者や国際機関職員、JICA関係者などです。

日本とコートジボワールは、地理的には遠く離れていますが、相互尊重に基づいた友好協力関係を維持・発展させています。今後も、経済、開発協力、文化など、様々な分野での関係深化が期待されます。
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CIA World Factbook
世界銀行 (World Bank)
外務省
国際ココア機関 (ICCO)

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