チュノム(字喃)とは
チュノム(字喃)は、ベトナム語を表記するために使用された古代の表意文字体系であり、ベトナムの文化と歴史において重要な役割を果たしました。この文字体系は、中国の漢字を基にしており、ベトナム語の語彙を表現するために新たに作られた文字も含まれています。
歴史的背景
チュノムは、10世紀にベトナムが中国から独立した後に発展し始めました。ベトナムの独立後、チュノムはベトナム語を表記するための主要な文字体系として使用されるようになりました。特に、陳朝時代には、チュノムが文学や行政文書に広く使用されるようになりました。
構造と特徴
チュノムは、中国の漢字を基にしており、漢字をそのまま使用する場合と、新たに作られた文字を使用する場合があります。新たに作られた文字は、音と意味を組み合わせた「音義文字」や、既存の漢字を組み合わせた「会意文字」などがあります。これにより、ベトナム語の発音や意味を正確に表現することが可能となりました。
使用例と文学
チュノムは、ベトナムの文学、哲学、歴史、法律、医学、宗教、政府政策など、多くの分野で使用されました。特に、15世紀から19世紀にかけて、多くの詩や小説がチュノムで書かれました。代表的な作品には、阮攸の『金雲翹伝』があります。この作品は、ベトナム文学の傑作とされ、チュノムで書かれた最も有名な作品の一つです。
衰退と現代
17世紀に入ると、フランスの宣教師アレクサンドル・ド・ロード(Alexandre de Rhodes)がローマ字を基にしたクオック・グーを開発しました。この新しい文字体系は、フランス植民地時代に広く普及し、チュノムの使用は次第に減少しました。現在では、チュノムを読める人は非常に少なくなっていますが、ベトナムの文化遺産として保存されています。
チュノムの遺産
チュノムは、ベトナムの文化と歴史において重要な役割を果たしました。その遺産は、ベトナムの文学や歴史的文書に見ることができます。