ラスコーとは
ラスコーとは、フランスのドルドーニュ県にある先史時代の洞窟絵画遺跡です。1940年に4人の少年が犬の後を追って洞窟に入り、壁や天井に描かれた動物や記号などの絵画を発見しました。この絵画は、約1万7000年前の旧石器時代後期に属するもので、人類史上最古の芸術の一つとして世界的に有名です。ラスコー洞窟は、1979年にユネスコの世界遺産に登録されました。
ラスコー洞窟の絵画は、約600点の動物や約1500点の刻痕、そして数百点の幾何学的記号からなります。動物の種類は、馬、牛、鹿、サイ、マンモス、ライオン、クマなど多岐にわたります。特に馬は、洞窟の約四分の一を占めるほど多く描かれています。絵画の技法は、赤や黒の顔料を使って壁に直接手で描いたり、スプレー状に吹き付けたり、または石器で壁を削って陰影をつけたりするなど、様々です。絵画の大きさも、数センチメートルから2メートル以上まで変化します。
ラスコー洞窟の絵画の意味や目的については、多くの説がありますが、確かなことは分かっていません。一般的には、狩猟の成功を祈願したり、儀式や崇拝の場として使ったり、または単に美的な表現として描いたりしたと考えられています。絵画には、人間の姿はほとんど見られませんが、唯一の例外は、鳥の頭を持つ人間と、槍で刺された牛との間に描かれたものです。この絵画は、人間と動物の関係や、性や死の象徴として解釈されることがあります。
ラスコー洞窟は、1948年に一般公開されましたが、人々の訪問によって洞窟内の温度や湿度が変化し、絵画にカビや藻が発生するなどの損傷が生じました。そのため、1963年に洞窟は閉鎖され、以降は科学者や専門家のみが限定的に入ることができます。一方、一般の人々にもラスコー洞窟の絵画を見てもらうために、1983年に洞窟のレプリカが近くに作られました。このレプリカは、ラスコー2と呼ばれ、洞窟の約90%を再現しています。さらに、2016年には、ラスコー4と呼ばれる移動式のレプリカが完成し、世界各地で展示されています。