こゆ/越ゆ/超ゆ
このテキストでは、ヤ行下二段活用の動詞「
こゆ/越ゆ/超ゆ」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「こゆ」には
①越ゆ/超ゆ
②
肥ゆ
③臥ゆ
などの用法があるが、ここでは「①越ゆ/超ゆ」を扱う。
ヤ行下二段活用
未然形 | こえ |
連用形 | こえ |
終止形 | こゆ |
連体形 | こゆる |
已然形 | こゆれ |
命令形 | こえよ |
■意味1:自動詞
(山や谷など障害となるものを)
越える。
[出典]:
城陸奥守泰盛は 徒然草
「城陸奥守泰盛は、双なき馬乗りなりけり。馬を引き出させけるに、足を揃へて閾をゆらりと
越ゆるを見ては...」
[訳]:城陸奥守泰盛は、比類するものがないくらいに素晴らしい馬乗りでした。馬を引き出させたときに、(馬が)足をそろえて敷居をひらりと
越えるのを見ては...
■意味2:自動詞
(季節や年が)
移る、変わる。
[出典]:竜の頸の玉 竹取物語
「年越ゆるまで音もせず。」
[訳]:年が変わるまで音沙汰がない。
■意味3:自動詞
まさる。
[出典]:柏木 源氏物語
「いみじき事を思ひ給へ嘆く心は、さるべき人々にもこえて侍れど...」
[訳]:(柏木の死という)並々ではないことを悲しみ嘆く(私の)心は、そのような人たち(悲しみを嘆くのが当然である身内)にもまさっておりますが...
■意味4:自動詞
上回る、追い越す。
[出典]:為光 大鏡
「人に越えられ、辛い目見ることは、さのみこそおはしあるわざなるを...」
[訳]:他人に(出世を)追い越され、辛い思いをすることは、よくあることですが...