ひしひしと
このテキストでは、古文単語「
ひしひしと」の意味、解説とその使用例を記している。
副詞
■意味1
(物が強くきしむ音を表して)
みしみしと、ぎしぎしと。
[出典]:
博打の子の婿入り 宇治拾遺物語
「博打一人、長者の家の天井にのぼりて、ふたりねたる上の天井を、
ひしひしとふみならして...」
[訳]:博打(仲間の)一人が、金持ちの家の天井にのぼって、二人が寝ている(部屋の)天井を、
ぎしぎしと踏み鳴らして...
■意味2
(わずかの隙もない様子を表して)
ぴったりと、ぎっしりと。
[出典]:
宇治川先陣 平家物語
「...丹の党をむねとして、五百余騎
ひしひしと轡を並ぶるところに」
[訳]:...丹の党を主力として、五百騎余りが
ぎっしりとくつわを並べているところに...
■意味3
てきぱきと、びしびしと。
[出典]:源氏揃 平家物語
「...とて、ひしひしと思し召したたせたまひけり。」
[訳]:...と、てきぱきと心をお決めになりました。
■意味4
(物を食べる音で)
むしゃむしゃと。
[出典]:
児のそら寝 宇治拾遺物語
「...と言ふ声のしければ、あなわびしと思ひて、今一度起こせかしと、思ひ寝に聞けば、
ひしひしとただ食ひに食ふ音のしければ...」
[訳]:...という声がしたので、ああ、困ったことだと思って、もう一度起こしてくれよと、思いながら寝て聞き耳をたてると、(僧たちが餅を)
むしゃむしゃと、ただどんどん食べる音がしたので...
■意味5
すっかり、しっかりと。
[出典]:世には心得ぬことの 徒然草
「近づきまほしき人の、上戸にてひしひしと馴れぬる、またうれし。」
[訳]:親しくなりたいと思う人が、酒が好きですっかりと打ち解けて親しくなったのは、また嬉しい。