おびたたし/おびただし/夥し
このテキストでは、シク活用の形容詞「
おびたたし/おびただし/夥し」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
形容詞・シク活用
未然形 | おびたたしく | おびたたしから |
連用形 | おびたたしく | おびたたしかり |
終止形 | おびたたし | ◯ |
連体形 | おびたたしき | おびたたしかる |
已然形 | おびたたしけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | おびたたしかれ |
■意味1
(程度が)
並々でない、はなはだしい、激しい。
[出典]:
花山院の出家 大鏡
「みづからの声にて、手を
おびたたしく、はたはたと打ちて...」
[訳]:(安倍晴明が)自らの声で、手を
激しく、ぱちぱちとたたいて...
■意味2
(建物の規模が)
非常に大きい。
[出典]:咸陽宮 平家物語
「あまりに内裏のおびたたしきを見て...」
[訳]:あまりに内裏が大きいのを見て...
■意味3
騒がしい、騒ぎが大きい。
[出典]:
辻風 方丈記
「
おびたたしく鳴りとよむほどに、もの言ふ声も聞こえず。」
[訳]:(風の音が)
騒がしく鳴り響くので、物を言う声も聞こえない。
■意味4
(数が)
非常に多い。
[出典]:
富士川 平家物語
「あな
おびたたし源氏の陣の遠火の多さよ。げにもまことに野も山も海も川も、みな敵でありけり。いかがせん。」
[訳]:ああ
すごい数だ、源氏陣営の火の多いことよ。本当に、野も山も海も川も、皆敵だらけだ。どうしたものか。
備考
近世以降は「おびただし」と濁って使われるようになった。その場合の活用は以下の通り。
未然形 | おびただしく | おびただしから |
連用形 | おびただしく | おびただしかり |
終止形 | おびただし | ◯ |
連体形 | おびただしき | おびただしかる |
已然形 | おびただしけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | おびただしかれ |