うたて
このテキストでは、古文単語「
うたて」の意味、活用、解説とその使用例を記しています。
※「うたて」は
①副詞
②形容詞「うたてし」の語幹
としての用法がある。
①副詞
■意味1
ますます、ますますひどく。
[出典]:万葉集
「三日月のさやにも見えず雲隠り見まくぞ欲しきうたてこのころ」
[訳]:三日月がはっきり見えず、雲に隠れている(ようにあなたの姿が見えない)ので、会いたいと思います。ますますひどく、最近は。
■意味2
(うたて+思ふ/覚ゆなどの形で)
嫌なことに、不快なことに、情けなく。
[出典]:徒然草 兼好法師
「かばかりの中に何かは、と人の心はなほうたて覚ゆれ。」
[訳]:これほどの(悲しみの)最中にどうしてこのようなことを(言うのか)、と人の心はやはり情けなく感じる。
■意味3
怪しく、気味が悪く、異様に。
[出典]:
夕顔 源氏物語
「
うたて思さるれば、太刀を引き抜きて、うち置き給ひて、右近を起こし給ふ。」
[訳]:
気味悪くお思いになられたので、太刀を引き抜いて、(夕顔の)枕元にお置きになり、右近をお起こしなります。
②形容詞・ク活用
※形容詞「うたてし」の語幹。
■意味
いやだ、情けない。
[出典]:
大納言殿参り給ひて 枕草子
「
うたて、なにしにさ申しつらむ。」
[訳]:
嫌だわ。なぜそのように(夜が明けてしまったようだと)申し上げたのだろうか。