現代語訳(口語訳)
袁傪はこれ(虎になった李徴の詠んだ詩)を見て驚き言いました。
「貴殿の才能や行いについては、私はよく知っています。
しかし貴殿がこのような状況に至ったのは、貴殿が日頃自分で残念に思うことがなくはないからではないですか。」と。
虎は言いました。
「万物を造り出し、その運命の決定がなされることについては、もともと親疎厚薄の隔たりなどなかったでしょう。
どのような場所で出会い、どのような運命に遭遇するかは、私の知るところではありません。
あぁ、顔回に不幸があったとき、そして冉有が病にかかったことを、かつて孔子は深く嘆いたと言います。
もし自ら残念に思うことを省みるのであれば、私にもまた(思い当たることが)あります。
きっとこれが原因でしょう。
私は昔からの友人に会ったとなると、自らそれを隠すことはしません。
私はいつもこのことを覚えています。
(私は)かつて、南陽の郊外で一人の未亡人と交際をしていました。
彼女の家の人が(私たちのことを)こっそりとかぎつけ、いつも私に危害を与えようとしていました。
未亡人は、そのために再び(私と)会うことができませんでした。
私はこのために、風に乗せて火をはなち、一家数人を、残らずすべて焼き殺して逃げたのです。
このことを残念に思うのみです。」と。
単語・文法解説
| 顔子 | 孔子の弟子であった顔回のこと |
| 冉有 | 孔子の弟子の一人 |
| 尼父 | 孔子の敬称 |
| 反求 | 原因を自分にもとめて責めること |
| 不知定因此乎 | 直訳すると「これが原因であることを知らないことはない」転じて「これが原因である」と訳す |
| 故人 | 亡くなった人ではなく、「旧友、昔からの友人」と訳す |
| 私 | 私物化する。ここでは「交際する」と訳す |
| 孀婦 | 未亡人 |