現代語訳(口語訳)
丹奔(はし)り往き、伏して哭す。
(樊於期が自害した知らせを聞いた)丹は走って行き、伏せて声を上げて泣きました。
乃ち函(はこ)を以て其の首を盛る。
そして箱に(樊於期の)首を入れたのです。
又嘗て天下の利匕首を求め、薬を以て之を焠(にら)ぎ、以て人に試みるに、血縷(る)のごとくにして立ちどころに死す。
またかつて天下に名の通った鋭い短刀を探し求め、これに毒薬をもって焼きを入れ、(その刀を)人に試してみたところ、血が細い糸のように流れただけでたちまち(切られた人は)死んでしまいました。
乃ち装して軻を遣る。
そこでこれを身につけさせて荊軻を秦に派遣しました。
行きて易水に至り、歌ひて曰はく、
(荊軻は)道中、易水という川に至り、歌いながら言いました。
「風蕭蕭として易水寒し
「風がもの寂しく吹き、易水は寒い(冷たい)。
壮士一たび去りて復た還らず」と。
勇ましい男は一度去ると、もう帰ってはこないだろう。」と。
時に白虹(はくこう)日を貫く。
そのとき白い虹が太陽を横切りました。
燕人之を畏る。
燕の人は、これを(何かよくないことの前触れと)恐れたのです。
つづき:
十八史略『荊軻』(軻至咸陽〜)書き下し文・現代語訳と解説
単語解説
| 哭 | 声を上げて泣くこと |
| 匕首 | 「ひしゅ」または「あいくち」と読み、つばのない短い短刀を意味する |
| 焠 | 鉄に焼きを入れる、鉄を鍛え直すこと。ここでは前後の文章から「刀に焼きを入れる」と訳す |
| 縷 | 細い糸のこと |
| 易水 | 趙と燕との国境を流れる川。このとき秦は趙を滅ぼしていた |