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蜻蛉日記原文全集「例のほどにものしたれど」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

例のほどにものしたれど

例のほどにものしたれど、そなたにも出でずなどあればゐわづらひて、この文ばかりを取りて帰りにけり。さてかれよりかくぞある。

をりそめし ときのもみぢの さだめなく うつろふいろは さのみこそ あふあきごとに つねならめ なげきのしたの  このはには いとどいひおく はつしもに ふかきいろにや なりにけん おもふおもひの たえもせず いつしかまつの みどりごを ゆきてはみむと するがなる たごのうらなみ たちよれど ふじのやまべの けぶりには ふすぶることの たえもせず あまぐもとのみ たなびけば たえぬわがみは しらいとの まひくるほどを おもはじと あまたの人の せかすれば みははしたかの すずろにて なつくるやどの なければぞ ふるすにかへる まにまには とひくることの ありしかば ひとりふすまの とこにして ねざめの月の まきのとに ひかりのこさず もりてくる かげだにみえず ありしより うとむ心ぞ つきそめし たれかよづまと あかしけん いかなるつみの おもきぞと いふはこれこそ つみならし 今日はあぶくまの あひもみで かからぬ人に かかれかし なにのいはきの みならねば おもふこころも いさめぬに うらのはまゆふ いくかさね へだてはてつる からごろも なみだのかはに そぼつとも 思ひしいでば たきものの 籠(こ)のめばかりは かはきなん かひなきことは かひのくに へみのみまきに あるるむまを いかでか人は かけとめんと おもふものから たらちねの おやとしるらん かたかひの こまやこひつつ いなかせんと おもふばかりぞ あはれなるべき


とか。つかひあれば、かくものす。

なつくべきひともはなてばみちのくの むまやかぎりにならんとすらん

いかが思ひけん、たちかへり、

われがなをおぶちのこまのあればこそ なづくにつかぬみともしられめ

かへし、また、

こまうげになりまさりつつなづけぬを こなはたえずぞたのみきにける

又、かへし、

しらかはのせきのせけばやこまうくて あまたの日をばひきわたりつる
 
あさてばかりは逢阪」


とぞある。時は七月五日のことなり。ながき物忌みにさしこもりたるほどに、かくありし返りごとには、

あまのかはなぬかをちぎる心あらば ほしあひばかりのかげをみよとや

ことわりにもや思ひけん、すこし心をとめたるやうにて、月ごろになりゆく。



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・蜻蛉日記原文全集「例のほどにものしたれど」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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