新規登録 ログイン

9_80 その他 / その他

枕草子 原文全集「弾くものは/笛は」

著者名: 古典愛好家
Text_level_1
マイリストに追加
弾くものは

弾くものは琵琶。調べは風香調。黄鐘調。蘇合の急。鶯のさえずりといふ調べ。

筝の琴、いとめでたし。調べは想夫恋。


笛は

笛は。横笛、いみじうをかし。遠うより聞ゆるが、やうやう近うなりゆくもをかし。近かりつるがはるかになりて、いとほのかに聞ゆるもいとをかし。車にても、徒歩(かち)よりも、馬にても、すべてふところにさし入れて持たるも、なにとも見えず、さばかりをかしき物はなし。まして、聞きしりたる調子などは、いみじうめでたし。暁などに忘れて、をかしげなる、枕のもとにありける見つたるもなほをかし。人のとりにおこせたるを、おしつつみてやるも、立文のやうにみえたり。
 

笙の笛は、月のあかきに、車などにて聞こえたる、いとをかし。所せく持てあつかひにくくぞ見ゆる。さて、ふく顔やいかにぞ。それは横笛もふきなしなめりかし。
 

篳篥(ひちりき)はいとかしがましく、秋の虫をいはば、轡虫(くつわむし)などの心地して、うたてけぢかく聞かまほしからず。ましてわろくふきたるは、いとにくきに、臨時の祭の日、まだ御前にはいでで、もののうしろに横笛をいみじうふきたてたる、あな、おもしろと聞くほどに、なからばかりより、うちそへてふきのぼりたるこそ、ただいみじう、うるはし髪もたらむ人も、みな立ちあがりぬべき心地すれ。やうやう琴、笛にあはせてあゆみいでたる、いみじうをかし。

Tunagari_title
・枕草子 原文全集「弾くものは/笛は」

Related_title
もっと見る 

Keyword_title

Reference_title
萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 下」 新潮社
松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店

この科目でよく読まれている関連書籍

このテキストを評価してください。

※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。

 

テキストの詳細
 閲覧数 16,072 pt 
 役に立った数 3 pt 
 う〜ん数 2 pt 
 マイリスト数 0 pt 

知りたいことを検索!