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枕草子 原文全集「ある所に、なにの君とかや」

著者名: 古典愛好家
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ある所に、なにの君とかや

ある所に、なにの君とかやいひける人のもとに、君達(きんだち)にはあらねど、その頃いたうすいたるものにいはれ、心ばせなどある人の、九月ばかりにいきて、有明のいみじう霧りみちておもしろきに、なごり思ひ出でられむと、ことばをつくして出づるに、いまはいぬらむと、とほくみおくるほど、えもいはず艶(えん)なり。出づるかたをみせて、たちかへり、立蔀(たてじとみ)の間に、かげにそひて立ちて、なほいきやらぬさまに、いまひとたびいひ知らせむと思ふに、

「有明の月のありつつも」


と、しのびやかにうちいひて、さしのぞきたる髪の、頭(かしら)にもよりこず、五寸ばかりさがりて、火をさしともしたるやうなりけるに、月の光もよほされて、おどろかるる心地のしければ、やをら出でにけり、とこそ語りしか。



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・枕草子 原文全集「ある所に、なにの君とかや」

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萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 下」 新潮社
松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店

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