アラブ帝国とイスラム帝国
歴史的に見て、
正統カリフ時代から
ウマイヤ朝までを
アラブ帝国と呼び、次の
アッバース朝を
イスラム帝国というのですが、この違いはどこから来るのでしょう。
ご存知の通り、イスラム教の創始者
ムハンマドはアラブ人の
クライシュ族の出身でしたし、イスラム世界はアラブ人の間に広まり、大きな勢力となっていきました。
ウマイヤ朝によるアラブ人優遇政策
ムハンマドの死後、4人の
正統カリフ時代を経て、
ムアーウィヤが
ウマイヤ朝を建国すると、ウマイヤ家は
カリフを世襲するようになります。
同時に、ウマイヤ朝はアラブ人ムスリムに優遇政策を行いました。
免税の特権や、
年金支給、重要な
官職をアラブ人で独占するなど、次第に非アラブ人のムスリム(
マワーリー)に不満が溜まって行きました。
このアラブ人優遇政策があったため、この時代のウマイヤ朝までをアラブ帝国というのです。
アッバース朝の成立
ウマイヤ朝は、シーア派や非アラブ系ムスリムの不満が募り、次第に弱体化して行きました。
こうした状況を利用し、メッカのハーシム家の
アブー=アルアッバースがウマイヤ朝を倒し、新たに
アッバース朝を開きます。
アッバース朝は、その後アラブ人の様々な特権を停止し、イスラム教徒間における平等を実現しました。
この時以降、アラブ人以外のムスリムにも平等に機会が与えられ、アッバース朝以降、アラブ帝国から
イスラム帝国へと転換が実現したのです。
ウマイヤ朝とアッバース朝の比較を表にしてみます。
| アラブ人 | 非アラブ人 |
ウマイヤ朝 | 免税特権・年金支給・官職独占 | イスラムに改宗してもジズヤ(人頭税)やハラージュ(地租)を負担 |
アッバース朝 | アラブ人の免税特権廃止・年金廃止・地租負担 | イラン人など非アラブ人ムスリムの登用・人頭税廃止・地租負担 |