「男いとうれしくて、わが寝る所に率て入りて、子一つより丑三つまであるに、まだ何ごとも語らはぬに帰りにけり」の現代語訳・口語訳・意味・品詞分解
原文
男、いと
うれしくて、わが
寝る所に
率て入りて、子一つより丑三つまで
あるに、まだ何ごとも
語らはぬに帰りにけり。
現代語訳・口語訳・意味
男は、とてもうれしくて、自分の寝床に(女を)連れて入り、午後十一時ごろから午前二時頃まで(一緒に)いたのですが、まだ何事も親しく語り合わないうちに(女は)帰ってしまいました。
品詞分解
| 単語 | 品詞 |
| 男 | 名詞 |
| いと | 副詞 |
| うれしく | シク活用の形容詞「うれし」の連用形 |
| て、 | 接続助詞 |
| わ | 代名詞 |
| が | 格助詞 |
| 寝(ぬ)る | ナ行下二段活用「ぬ」の連体形 |
| 所 | 名詞 |
| に | 格助詞 |
| 率 | ワ行上一段活用「ゐる」の連用形 |
| て | 接続助詞 |
| 入り | ラ行四段活用「いる」の連用形 |
| て、 | 接続助詞 |
| 子一つ | 名詞 |
| より | 格助詞 |
| 丑三つ | 名詞 |
| まで | 副助詞 |
| ある | ラ行変格活用「あり」の連体形 |
| に、 | 接続助詞 |
| まだ | 副詞 |
| 何ごと | 名詞 |
| も | 係助詞 |
| 語らは | ハ行四段活用「かたらふ」の未然形 |
| ぬ | 打消の助動詞「ず」の連体形 |
| に | 接続助詞 |
| 帰り | ラ行四段活用「かへる」の連用形 |
| に | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
| けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
主な出典
【伊勢物語「狩りの使ひ」】
二日といふ夜、男、われて、「逢はむ。」と言ふ。女もはた、いと逢はじとも思へらず。されど、人目しげければ、え逢はず。使ひざねとある人なれば、遠くも宿さず。女の閨近くありければ、女、人をしづめて、子一つばかりに、男のもとに来たりけり。男はた、寝られざりければ、外の方を見いだしてふせるに、月のおぼろなるに、小さき童を先に立てて、人立てり。男いとうれしくて、わが寝る所に率て入りて、子一つより丑三つまであるに、まだ何ごとも語らはぬに帰りにけり。男いとかなしくて、寝ずなりにけり。