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徒然草『あだし野の露消ゆるときなく』のわかりやすい現代語訳と解説
著作名: 走るメロス
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徒然草『あだし野の露消ゆる時なく』原文・現代語訳と解説

このテキストでは、徒然草の一節『あだし野の露消ゆる時なく』の原文、わかりやすい現代語訳・口語訳とその解説を記しています。



徒然草とは

徒然草兼好法師によって書かれたとされる随筆です。清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』と並んで「古典日本三大随筆」と言われています。


原文(本文)

あだし野の露消ゆるときなく、鳥部山の煙立ち去らでのみ、住み果つるならひならば、いかにもののあはれもなからん。世は定めなきこそいみじけれ。

命あるものを見るに、人ばかり久しきはなし。かげろふの夕べを待ち、夏の蝉の春秋を知らぬもあるぞかし。つくづくと一年を暮らすほどだにも、こよなうのどけしや。飽かず、惜しと思はば、千年を過ぐすとも、一夜のの心地こそせめ。住み果てぬ世に、みにくき姿を待ちえて、何かはせん。命長ければ辱多し。長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、目安かるべけれ。





そのほど過ぎぬれば、かたちを恥づる心もなく、人に出で交じらはんことを思ひ、夕べの陽に子孫を愛して、さかゆく末を見んまでの命をあらましひたすら世をむさぼる心のみ深く、もののあはれも知らずなりゆくなん、あさましき。




現代語訳(口語訳)

あだし野の露は消えるときがなく、(また)鳥部山の煙が立ち去らないでいるように、(人が永遠にこの世の限りまで)この世に住み続ける習わしであるのならば、どんなに物の情緒というものがないことでしょう。この世は無常だからこそ素晴らしいのです。





命があるものを見るにつけても、人間ほど長生きするものはありません。かげろう(虫の名前)が(朝に生まれて)夕方を待たずに(死ぬこともあれば)、セミが(夏限りの命なので)春や秋を知らずに(死んでしまう)いることもあるのです。しみじみと一年を暮らすだけでさえも、この上なくゆったりとしていることです。(にもかかわらず人生に)満足せず、命が惜しいと思うのであれば、(例え)千年を生きようとも、一晩の夢のようなはかない気持ちがするでしょう。いつまでも住み続けることのできないこの世で、醜い姿を待ち迎えて(老いて醜い姿になって)、それが何になるでしょうか、いや何にもなりません。命が長いと恥をかくことも多くなります。長くても40歳に足りないくらいで死ぬのが、見苦しくないでしょう。





その年齢を過ぎてしまうと、(自分の)容姿を恥じることもなく、人の前に出て付き合おうということを思い、夕日のような(残りわずかな)命の身で子や孫をかわいがり、(彼らが)繁栄してゆく将来を見届けるまでの命を期待し、ただただこの世の利益や欲望に執着する心だけ強く、物の情緒さもわからなくなっていくのは、まったく嘆かわしいことです。

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