スンナ派とは
スンナ派は、イスラム教の最大の宗派であり、全世界のイスラム教徒の約85~90%がこの宗派に属しています。彼らはムハンマドの言行(スンナ)を重視し、その名称は「スンナの人々」に由来しています。
スンナ派の起源と歴史
後継者問題と分裂
スンナ派の起源は、ムハンマドの死後にさかのぼります。ムハンマドが後継者を明確に指名しなかったため、イスラム教徒の間で後継者に関する対立が生じました。スンナ派は、ムハンマドの最も近しい仲間であるアブー=バクルを初代カリフとして支持したのに対し、シーア派はムハンマドの従兄弟であり義理の息子でもあるアリーを後継者として認めました。
正統カリフ時代
スンナ派は、アブー=バクル、ウマル、ウスマーン、アリーの四人のカリフを「正統カリフ」として敬愛しています。これらのカリフは、イスラム教の初期の拡大と統治において重要な役割を果たしました。
ウマイヤ朝とアッバース朝
ウマイヤ朝(661年-750年)とアッバース朝(750年-1258年)は、スンナ派のもとでイスラム帝国を統治しました。これらの王朝は、イスラム文明の発展に大きく寄与しました。特に、アッバース朝時代には、バグダッドが文化と学問の中心地として栄えました。
スンナ派の信仰と教義
六信と五行
スンナ派の信仰は、六信と五行に基づいています。六信とは、アッラー、天使、聖典、預言者、来世、定命を信じることを指し、五行は信仰告白(シャハーダ)、礼拝(サラート)、断食(サウム)、喜捨(ザカート)、巡礼(ハッジ)の実践を意味します。
スンナとハディース
スンナ派は、ムハンマドの言行(スンナ)を重視し、これを記録したハディースを信仰の重要な源としています。特に、サヒーフ・アル=ブハーリーやサヒーフ・ムスリムなど、六大ハディース集はスンナ派の教義と法学の基盤となっています。
法学派(マズハブ)
スンナ派には四つの主要な法学派(マズハブ)が存在します。これらは、ハナフィー派、マーリク派、シャーフィイー派、ハンバル派であり、それぞれがイスラム法(シャリーア)の解釈と適用において独自のアプローチを持っています。
ハナフィー派: アブー・ハニーファによって創設され、特にトルコ、インド、パキスタン、バングラデシュで広く信仰されています。
マーリク派: マーリク・イブン・アナスによって創設され、主に北アフリカと西アフリカで信仰されています。
シャーフィイー派: アル=シャーフィイーによって創設され、特にエジプト、インドネシア、マレーシアで広く信仰されています。
ハンバル派: アフマド・イブン・ハンバルによって創設され、特にサウジアラビアとカタールで信仰されています。
スンナ派の現代
現代の課題と対立
現代においてもスンナ派はイスラム教徒の多数派を占めていますが、シーア派との対立や内部の宗教的・政治的な課題に直面しています。特に中東地域では、スンナ派とシーア派の間の緊張が高まっており、これが地域の安定に影響を与えています。
スンナ派はイスラム教の最大の宗派であり、その歴史、信仰、文化は非常に豊かです。彼らの教義や伝統は、信者の生活やコミュニティの一部として深く根付いています。