エピクロスの生涯
エピクロス(紀元前342年頃 - 紀元前271年頃)は、古代ギリシャの哲学者で、エピクロス派の創設者です。彼はサモス島に生まれ、アテナイで教育を受けました。彼の哲学は快楽主義として知られていますが、これは単なる肉体的快楽の追求ではなく、精神的な平穏(アタラクシア)と苦痛の不在(アポネイア)を重視するものでした。
エピクロスの哲学
エピクロスの哲学は、次の三つの主要な要素から構成されています。
自然哲学
エピクロスは、デモクリトスの原子論を発展させ、世界は原子と空虚から成り立っていると考えました。彼は感覚を信頼できるものとし、感覚経験を通じて世界を理解できると主張しました。また、彼は神々の存在を否定せず、彼らが人間の生活に干渉しないと述べることで、宗教的な恐怖からの解放を目指しました。
認識論
エピクロスは、感覚が真実を伝えるものであると考え、誤りは感覚そのものではなく、それを評価する思考過程に由来するとしました。さらに、彼は死を恐れる必要はないと主張しました。なぜなら、死後は感覚がなくなるため、苦痛を感じることはないからです。
倫理学
エピクロスの倫理学は快楽主義に基づいていますが、これは肉体的快楽の追求ではなく、精神的な平穏と苦痛の不在を目指すものです。彼は欲望を三つに分類しました。自然で必要な欲望(友情、健康、食事など)、自然だが不必要な欲望(豪華な食事や大邸宅)、そして自然でも必要でもない欲望(名声や権力)です。彼は、自然で必要な欲望だけを追求することが重要であると考えました。
エピクロスの影響
エピクロスの哲学は、彼の死後も長い間影響を及ぼし続けました。彼の学び舎「エピクロスの園」は弟子たちによって引き継がれ、ローマ時代にはルクレティウスやピロデモスなどの詩人や哲学者がエピクロスの思想を広めました。
エピクロスの著作
エピクロスは多くの著作を残しましたが、その多くは失われています。現存する著作としては、ディオゲネス・ラエルティオスによる「ヘロドトス宛の手紙」「ピュトクレス宛の手紙」「メノイケウス宛の手紙」などがあります。