はじめに
このテキストでは、万葉集の第5巻に収録されている「
梅の花咲きたる園の青柳はかづらにすべくなりにけらずや」(八一七)の現代語訳・口語訳とその解説を記しています。この和歌は、平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった万葉集『
梅花の歌三十二首并せて序』に収録された32首のうちのひとつです。
原文
梅の花 咲きたる(※1)園の 青柳は (※2)かづらにすべく なりに(※3)けらずや
ひらがなでの読み方
うめのはな さきたるそのの あをやぎは かづらにすべく なりにけらずや
現代語訳
梅の花が咲いている庭の青柳は、(枝が伸びて輪に巻いて)髪飾りにすることができそう(なほど見事)になったではないか
解説
少弐粟大夫(=本名未詳)作の歌です。大伴旅人主催の梅花の宴にて詠まれた32首のひとつです。梅花の宴とは文字通り梅の花を題材とした歌を詠む会で、当時太宰府の長官であった大伴旅人を中心に開催されました。そのときに詠まれた32首にはすべて梅の花が含まれています。
単語・文法解説
(※1)園 | 梅花の宴で集まった大伴旅人宅の庭 |
(※2)かづら | 植物を髪に巻きつけて飾りとしたもの |
(※3)けらずや | 上代の用法で「〜たではないか」と訳す |