伊勢物語『武蔵野』
このテキストでは、
伊勢物語の第12段『
武蔵野』(むかし、男ありけり。人のむすめを盗みて、武蔵野へ率てゆくほどに〜)の品詞分解を記しています。書籍によっては「野焼き」と題するものもあります。
※伊勢物語は平安時代初期に書かれた歌物語です。作者は未詳ですが、
在原業平がモデルではないかと言われています。
品詞分解
※名詞は省略しています。
■むかし、男ありけり。人のむすめを盗みて、武蔵野へ率てゆくほどに、ぬすびとなりければ、国の守にからめられにけり。
むかし、 | ー |
男 | ー |
あり | ラ行変格活用「あり」の連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
人 | ー |
の | 格助詞 |
むすめ | ー |
を | 格助詞 |
盗み | マ行四段活用「ぬすむ」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
武蔵野 | ー |
へ | 格助詞 |
率 | ワ行上一段活用「ゐる」の連用形 |
て | 接続助詞 |
ゆく | カ行四段活用「ゆく」の連体形 |
程 | ー |
に、 | 格助詞 |
盗人 | ー |
なり | 断定の助動詞「なり」の連用形 |
けれ | 過去の助動詞「けり」の已然形 |
ば、 | 接続助詞 |
国の守 | ー |
に | 格助詞 |
からめ | マ行下二段活用「からむ」の未然形 |
られ | 受身の助動詞「らる」の連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
■女をば草むらのなかに置きて、逃げにけり。道来る人、「この野はぬすびとあなり。」とて、火つけむとす。
女 | ー |
を | 格助詞 |
ば | 係助詞 |
草むら | ー |
の | 格助詞 |
なか | ー |
に | 格助詞 |
おき | カ行四段活用「おく」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
逃げ | ガ行下二段活用「にぐ」の連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |
道 | ー |
来る | カ行変格活用「く」の連体形 |
人、 | ー |
「こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
野 | ー |
は | 係助詞 |
盗人 | ー |
あ | ラ行変格活用「あり」の連体形「ある」の撥音便「あん」の「ん」の無表記 |
なり。」 | 推定の助動詞「なり」の終止形 |
とて、 | 格助詞 |
火 | ー |
つけ | カ行下二段活用「つく」の未然形 |
む | 意志の助動詞「む」の終止形 |
と | 格助詞 |
す。 | サ行変格活用「す」の終止形 |
■女わびて、「武蔵野は今日はな焼きそ若草のつまもこもれりわれもこもれり」とよみけるを聞きて、女をばとりて、ともに率ていにけり。
女 | ー |
わび | バ行上二段活用「わぶ」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
「武蔵野 | ー |
は | 係助詞 |
けふ | ー |
は | 係助詞 |
な | 副詞 |
焼き | カ行四段活用「やく」の連用形 |
そ | 終助詞 |
若草 | ー |
の | 格助詞 |
つま | ー |
も | 係助詞 |
こもれ | ラ行四段活用「こもる」の已然形 |
り | 完了の助動詞「り」の終止形 |
われ | 代名詞 |
も | 係助詞 |
こもれ | ラ行四段活用「こもる」の已然形 |
り」 | 完了の助動詞「り」の終止形 |
と | 格助詞 |
よみ | マ行四段活用「よむ」の連用形 |
ける | 過去の助動詞「けり」の連体形 |
を | 格助詞 |
聞き | カ行四段活用「きく」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
女 | ー |
を | 格助詞 |
ば | 係助詞 |
とり | ラ行四段活用「とる」の連用形 |
て、 | 接続助詞 |
ともに | 副詞 |
率 | ワ行上一段活用「ゐる」の連用形 |
て | 接続助詞 |
いに | ナ行変格活用「いぬ」の連用形 |
けり。 | 過去の助動詞「けり」の終止形 |