さること/然る事
このテキストでは、古文単語「
さること/然る事」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
成り立ち
連体詞「さる」(ラ行変格活用「さり」の連体形とする説もある)と名詞「事」が一語になったもの。
連語
■意味1
(前の言動を受けて)
そのようなこと、そんなこと。
[出典]:
いみじき成敗 沙石集
「『七つこそありしに、六つあるこそ不審なれ。一つをば隠されたるにや。』と言ふ。 『
さることなし。もとより六つなり。』...」
[訳]:「(軟挺は)七つあったはずだが、(ここに)六つあるのは疑わしい。一つお隠しになられたのではないですか。」と(持ち主の男は)言います。(夫は)「
そのようなことはありません。もともと六つですよ。」...
■意味2
(前の言動を肯定して)
もっともなこと、そのとおり、しかるべきこと。
[出典]:
いでや、この世に生まれては 徒然草
「『人には木の端のやうに思はるるよ。』と、清少納言が書けるも、げに
さることぞかし。」
[訳]:「(法師というものは)人には木の端のように(たいしたことがないものと)思われているよ。」と清少納言が書いているのも、本当にもっともなことです。
■意味3
言うまでもないこと、もちろんのこと。
[出典]:重衡被斬 平家物語
「日ごろの悪業はさることなれど、今の有様を見奉るに...」
[訳]:常々の悪行は言うまでもないことだが、今日の有様を拝見するにつけ...
■意味4
たいしたこと、それほどのこと。
[出典]:宇治拾遺物語
「さることはなけれど、高く大きに盛りたる物ども持て来つつ据ゆめり」
[訳]:たいしたことはないが、高く大きく盛った品々を持って来ては据えるようだ。