藤原定家/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解
このテキストでは、
新古今和歌集に収録されている歌「
見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮」の現代語訳・口語訳と解説、そしてその品詞分解をしています。
藤原定家が詠んだ歌で、三夕の歌の一首です。
新古今和歌集とは
新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)は、鎌倉時代初期に編纂された勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)です。勅撰和歌集とは、天皇や上皇の命令により編集された和歌集のことです。
原文
見渡せば(※1)花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮
ひらがなでの読み方
みわたせば はなももみじも なかりけり うらのとまやの あきのゆうぐれ
現代語訳・解釈
見渡してみると、春の美しい花も秋の紅葉も(ここには)ないことよ。海辺の苫ぶきの粗末な小屋のあたりの秋の夕暮れよ。
単語
(※1)花も紅葉も | 「花」は春を、「紅葉」は秋を連想させる代表的な名詞 |
解説・鑑賞のしかた
この歌の詞書には、「西行法師が私にすすめて百首の歌を詠ませたときに(詠んだ歌)」と書かれています。
この歌は、源氏物語の「明石」の章の「なかなか、春秋の紅葉の盛りなるよりは、ただそこはかとなう茂れる陰どもなまめかしきに」(かえって、春秋の花や紅葉が盛りである時よりも、ただ何気なく茂っている草の蔭などが、美しい感じがする)を典拠(出典)とし、光源氏の立場にたって詠んだ歌とされています。
花も紅葉もないと述べていますが、花や紅葉という言葉をあえて一度使うことによって、まず読者に華やかなイメージをうえつけています。その効果によって、後に続く「浦の苫屋の秋の夕暮」という言葉から受ける寂しさをよりいっそう強く感じますね。伝統的な色彩美を消し去り、静かさや寂しさの中に感じる趣が「わび、さび」と結びついて称賛されました。
品詞分解
※名詞は省略しています。
見渡せ | サ行四段活用「みわたす」の已然形 |
ば | 接続助詞 |
花 | ー |
も | 係助詞 |
紅葉 | ー |
も | 係助詞 |
なかり | ク活用の形容詞「なし」の連用形 |
けり | 詠嘆の助動詞「けり」の終止形 |
浦 | ー |
の | 格助詞 |
苫屋 | ー |
の | 格助詞 |
秋 | ー |
の | 格助詞 |
夕暮 | ー |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。