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孟子『無恒産而有恒心者・恒産無くして恒心有る者』現代語訳・書き下し文・解説

著者名: 走るメロス
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現代語訳

孟子がおっしゃいました。
「安定した収入がなくても常に定まっている正しい心を持つということは、ただ学問教養のある人だけができるのです。
一般庶民なら安定した収入がなければ定まった心を持つことはありません。
もし安定した心がなければ、勝手気ままに、わがまま放題に悪い行いをしないということはありません。
(罪を犯す要因を知っていながら国民が)罪を犯したときに、罪を犯した後にこれを処罰することは、国民を(罠をはって)網にかけるようなものです。
どうして人徳のある人間が(国を治める)位にありながら、国民に網をしかけて捕まえるようなことをしてよいでしょうか、いやよくありません。
このために過去の時代の名君は、国民の生業を定めるために、必ず(自分からみて)上は父母に十分に仕えられるように、下は妻子を十分に養えるように、そして豊年の年には腹一杯食べることができ、不作の年にも餓死をさせることなく、そのようにしてから国民を励まして善い行いをするように仕向けました。
そのために国民は君主に従うことがたやすかったのです。
(しかし)昨今は国民の生業を定めるために、(自分からみて)上は父母に仕えるのに十分ではなく、下は妻子を養うのにも十分ではなく、豊作の年でも終始苦しみ、凶作の年には餓死を免れることができません。
これでは(国民は)、餓死することを免れようとするも(そのための)力が足らないことを恐れている状態です。
(このような状態で)どうして礼と儀をおさめる余裕があるでしょうか、いや、ありません。」と。



単語・文法解説

恒産安定した収入や財産
恒心常に定まっている正しい心
放辟邪侈勝手気ままに、わがまま放題に悪い行いをすること
無不為已二重否定になっており、直訳すると「しないことはない」、転じて「必ずする」と訳す
再読文字。「焉A也」で「いずくんぞA(せ)ん」と読み、反語を表す
凶年免於死亡ここでの死亡は凶作による死亡なので「餓死」と訳す
奚暇治礼義哉「奚」は再読文字。「奚A哉」で「なんぞA(せ)ん」と読み、反語を表す



著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。
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鎌田正、米山寅太郎 著 2011 『新漢語林 第二版』大修館書店
『教科書 高等学校 古典B 漢文編』 三省堂

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