『泊天草洋』
ここでは、頼山陽の詠んだ『泊天草洋』(天草洋に泊す)の書き下し文、現代語訳(口語訳)とその解説を行っています。
白文(原文)
左から右に読んでください
雲 耶 山 耶 呉 耶 越
水 天 髣 髴 青 一 髪
万 里 泊 舟 天 草 洋
煙 横 篷 窓 日 漸 没
瞥 見 大 魚 波 間 跳
太 白 当 船 明 似 月
書き下し文
雲か山か呉か越か
水天髣髴(すいてんほうふつ) 青一髪(せいいっぱつ)
万里舟を泊す 天草の洋
煙は
篷窓(ほうそう)に横たわりて 日漸(ようや)く没す
瞥見(べっけん)す 大魚の波間に跳るを
太白 船に当たりて明月に似たり
現代語訳(口語訳)
(はるか彼方に見えるのは)雲であろうか、山であろうか、呉であろうか、それとも越であろうか。
海と空が接する辺りは、一筋の黒い髪の毛を張ったように見える。
はるか万里の彼方からやってきて、天草洋に停泊すると、
夕もやが船の窓辺に立ち込めて、太陽は次第に沈んでいく。
波間には大きな魚が跳ねているのをがちらりと見えた。
宵の明星の光が船を照らしており、その明るさは月のようである。
句形と押韻
この漢詩は、「
七言古詩」という形式の詩です。「七言詩」と「古体詩」が組み合わさったものです。
■七言詩
七つに並んだ漢字からなる詩を「七言詩」と言います。
■古体詩
古体詩とは、ざっくりと言えば「五言絶句、五言律詩、七言絶句、七言律詩」以外の詩を指すと考えてください。
■押韻
この漢詩では、次の語が韻を踏んでいます(押韻という)。
・「越(エツ)」、「髪(ハツ)」、「没(ボツ)」、「月(ゲツ)」
単語解説
篷窓 | 粗末な窓辺 |
瞥見 | ちらっと見る |
太白 | 宵の明星、金星のこと |