はじめに
現在の日本は市場経済だと言われています。
市場経済について学ぶ上でも、市場そのものを理解することからはじめてみましょう。
市場とは
市場と聞くと、どんなイメージを持つでしょう。魚の市場、野菜の生鮮市場などでしょうか。どれも正しいイメージです。
そもそも市場というのは商品やサービスを、
生産者と
消費者が価格の仲介を通じて交換する場所のことです。
資本主義経済というのは、財やサービスのほぼすべてが、市場で取引されます。そのため市場経済とも言うのです。
市場にはいくつかの種類があります。
まず、
商品市場がその一つです。
商品市場とは、先の青果市場のように、商品やサービスを取引する市場のことです。
次に労働力を取引する
労働市場があります。
これは、労働力を取引の商品とする抽象的な市場のことです。
最後に、
金融市場があります。
金融市場は、お金の余っている場所から、お金が必要な場所へ供給するための市場です。株式売買を行う
株式市場、外国の為替を取引する
外国為替市場などがその代表例です。
完全競争と価格
資本主義社会の市場は、競争状態が原則だとされています。
ここで、競争状態と価格の働きを理解するために、
完全競争市場について説明します。
完全競争市場というのは、以下の四つの特徴のある市場を指します。(完全競争市場は経済学で想定された市場で、現実に存在する市場ではありません。)
財の売手と買手が小規模で多数存在すること
取引される財は全く同じ物であること
財に関する全ての情報を売手と買手の双方が持っていること
市場への参入と退出が自由なこと
さて、ここで完全競争市場での価格メカニズムを見てみましょう。
ある財の完全競争市場では、価格が上昇すれば生産者は儲かるので、供給量を増やしますよね。ところが、供給を増やした結果、買い手は適切な数量しか買わないので供給過剰が起きます。
その後、供給過剰になると、買い手がつかなくなるので次第に財の価格は下がってきます。
価格が一定のラインまで下がれば、買いどきだと思う買い手が現れるので、需要が増えます。しかし、売り手の利潤は減ってしまうので、供給が減り、需要超過状態となります。その後、再度価格があがるということが起こります。
このように完全競争市場では、価格の変動が、個々の経済主体の需要と供給を増減させていきます。その結果として、需要と供給がある一点で一致する場合があります。この一致点の価格を
均衡価格、需要供給量を
均衡取引量といいます。
神の見えざる手
上記のように、市場では高く売りたい売り手と、安く買いたい買い手の需要と供給を自動的に一致(均衡)させる役割を持ちます。
この役割のことを、価格の
自動調節機能といいます。
イギリスの経済学者
アダム・スミスは、著書『
諸国民の富(国富論)』の中で
「人は自分自身の安全と利益だけを求めようとする。この利益は、例えば「莫大な利益を生み出し得る品物を生産する」といった形で事業を行うことにより、得られるものである。そして人がこのような行動を意図するのは、他の多くの事例同様、人が全く意図していなかった目的を達成させようとする見えざる手によって導かれた結果なのである。」(『国富論』第4編「経済学の諸体系について」第2章)
と述べ、価格の自動調節機能を、「神の見えざる手」と表現したのです。
おわりに
今回は市場についての基礎的な説明でした。
この市場の概念は、経済学の基礎となるものです。
市場と価格の概念を思い出しながら、普段の生活の価格について調べてみるのも、面白いかもしれません。