殿司こそ、なほをかしきものはあれ
殿司(とのもづかさ)こそ、なほをかしきものはあれ。
下(しも)女のきはは、さばかりうらやましきものはなし。
よき人にもせさせまほしきわざなめり。
若くかたちよからむが、なりなどよくてあらむは、ましてよからむかし。
すこし老いてものの例知り、面(おも)なきさまなるも、いとつきづきしくめやすし。
殿司の、顔愛敬づきたらむ、ひとり持たりて、装束時にしたがひ、裳・唐衣(からぎぬ)などいまめかしくてありかせばや、とこそおぼゆれ。
郎等は
郎等(をのこ)は、また、随身(ずいじん)こそあめれ。
いみじう美々しうてをかしき君達も、随身なきはいとしらじらし。
弁などは、いとをかしき司(つかさ)に思ひたれど、下襲(したがさね)のしり短くて、随身のなきぞいとわろきや。